『ケン・ジョセフの世界どこでも日本緊急援助隊』(その1)

昨日、新大阪行きの新幹線の中で『ケン・ジョセフの世界どこでも日本緊急援助隊asin:4198616604 を読んだ。読みやすくて面白いので一気に読了。

ケン・ジョセフは JET (Japan Emergency Team: 日本緊急援助隊)という災害復興ボランティアなどを手がける団体のリーダーです。イラクの戦後統治問題を議論したマル激第141回にゲスト出演していた彼に興味を持って買った本ですが、彼のマル激での奇妙とも思える主張の背景がよくわかりました。彼の主張は、

というもの。日本のメディアでありがちな議論を見慣れた目には最初の三つと最後の一つは矛盾してるようで、こいつは右翼なのか左翼なのか? みたいに困惑してしまいそう。しかしこれは、右とか左とかあるいは彼の信仰するキリスト教の思想とも関係なく、彼がボランティア活動を通じて拾った現場の声から組み立てた論理で、それだけに妙に説得力があるのです。

イラク攻撃に関しては出版のタイミングのせいで『世界どこでも…』には記述がありませんが、マル激での発言によれば、イラクの一般市民は米軍の攻撃を待ち望んでいて、フセイン政権下の抑圧された生活が続くくらいなら米軍の爆撃で死んだ方がまだマシとさえ思っていたとのこと。「人間の盾」なんてとんでもない、そのせいでイラク攻撃が中止になったらどうするんだ! *1というのが本音だったとも。

そして米英軍の占領統治下のイラク市民が一番心配しているのは、テロそのものではなく、テロに懲りて米英軍が撤退してしまわないかということだそうです。治安の悪化なんてかつての恐怖政治に比べたらたいして怖くはないから、現地のイラク市民はイラクが危険だなんていう実感はないんだとか。

実際テロリストの多くはよそからやってきた賞金稼ぎ*2で米兵を一人殺したらいくらヘリを一機落としたらいくらみたいな感じだそうで、基本的には米英軍や軍に協力している勢力の施設がターゲットで、そういうところにむやみに近付かなければほぼ安全とのこと。

と、いうような話をケンが日本のテレビ(というかテレビ朝日)で喋ろうとしたら断られたそうで。。。イラクへの自衛隊派遣に反対するメディアとしては、彼らが反対する理由をことごとく否定するような主張は受け容れがたいということでしょう。ですが、実際にはケンも自衛隊派遣には反対なのです。ここまでの話の流れからはちょっと予想がつかないと思いますが、なるほど、というような理由があるのです。マル激の放送中でも説明はありましたが、『世界どこでも…』を読むとよくわかります。
(次回に続く)


*1:同じ「人間の盾」批判でも日本で見られた冷笑主義的批判とは違う切実さが印象的。

*2:米英軍の数が中途半端なので国境線を押さえきれずずいぶん流入しているとのこと。