ネコの行動学

[id:contractio:20040519#1084943974] 酒井泰斗様が猫にご興味をもたれたようです(AA略)。写真はしっぽを立てて頬をこすりつけているように見えますが、そうだとすれば友好的な挨拶行動と思われます。少なくとも防御姿勢はとってないのでいやがってはいないかと。

猫の本は色々ありますが、泰斗さんにはパウル・ライハウゼン『ネコの行動学』ASIN:4886223036 をおすすめします*1。「行動学」というのはダテじゃなくて、40年間ネコ科の動物を研究してきた本職の動物行動学者による研究書です。思いっきり学術書なのと、半分は捕食行動(残りが社会行動)の分析なので、ペットの猫の気持ちが知りたい人にはオーバースペックかつ飼い主が知りたそうな細かい仕草についての記述が少なかったりするのには注意。

ネコの行動学 目次:

  • はじめに
  • I 獲物に対する行動
    • 1 獲物への接近
    • 2 獲物をとらえ、殺す
    • 3 真空活動、獲物の代用物への反応
    • 4 殺した獲物の扱い
    • 5 羽をむしり、振りとばす
    • 6 とらえた獲物を食べはじめる
    • 7 獲物を食べる
    • 8 獲物捕獲を引き起こす要因と、その方向を決める要因
    • 9 イエネコの獲物となる動物
    • 10 獲物捕獲行動の発達
      • a 獲物を殺す行動の個体発生
      • b 殺しのかみつきの定位
      • c 獲物との遊び
      • d 空腹と獲物捕獲
      • e 経験と学習
      • f 個体ごとに、種ごとに異なる狩りのテクニック
  • II 社会行動
    • 11 未知のネコの出会い
    • 12 ネコはネコのどこを見ているか
    • 13 慣れ親しんだ空間でのネコの出会い
    • 14 雄ネコの闘争
    • 15 防御行動
    • 16 攻撃と防御の重なり合い
    • 17 ネコ類の威嚇と闘争の比較行動学
    • 18 なわばり行動と順位
    • 19 ライオンの社会生活
    • 20 順位と「過密化」
    • 21 よく知っている人間に対する行動
    • 22 性行動
    • 23 子育て
    • 24 ネコは本能運動を「自在に」転用する
  • 文献
  • 索引
  • 訳者あとがき

対猫マニュアルとしてはともかくとして、動物学者が動物の特定の行動が本能かどうかについてどんな議論をしているか*2がわかるという意味でも面白い本です。原書が古いこともあっていわゆる利己的遺伝子がどうとか、それ系の行動解釈はありませんが。


*1:もう持ってたりして。以前某MLで紹介したし。

*2:例えば真空活動(シャドーボクシングみたいな感じの対象のない行動で、刺激-反応モデルの立場から批判されていたがライハウゼンは支持)についての議論とか。