グロ画像と表現の自由

町山さんが日記に死体の映った画像*1を貼ったらクレームが来た件(id:TomoMachi:20041106)について。

結論から言うとゾーニングが必要になる問題だと思うので、単純に町山さんを支持できない。一方ではてな側が「公序良俗」とか言ってるのも納得行かない。

グロ画像を見て吐き気を催したり気分悪くなったりするのは、たぶん思想や信条とは関係ない生理的な反応でしょう。猿は生まれつき骸骨を怖がるそうで、それと似たようなものかと。一度もグロ画像を見たことない人でも反応するし、漫画による表現だと反応しにくいという経験もあるので、純粋に特定の色や質感のパターンに反応する神経回路が生得的にあるのだと思う。

だから、グロ画像の掲載に対して「不快だから消してくれ」というのは思想・信条の押しつけ的なクレームとは違い、むしろ背景画像にポケモンフラッシュ(特定の周期で点滅する光刺激で、じっと見ると吐き気を催す)使うのやめてくれ、というのに近い話なのでは?

町山さんは「イラク戦争とそれを起こしている人々への嫌悪感を感じてもらうために掲載しました」と言うけれど、そういう嫌悪感とグロ画像への嫌悪感は別物だと思うし、パブロフの犬的な条件付けを狙ってるとしたらちょっとずるいやり方だと思った。

一方ではてながグロ画像を「公序良俗に反する書き込みや画像」と言うのも変。これは書き込みや画像の内容が一般的な道徳的価値観に反するというような意味なので。

程度問題として、どの程度のものだと見せていいのか(画像の解像度*2とかカラー画像かどうかとか)、どうやってゾーニングするか(ページの頭で警告すれば十分か、別コンテンツにしてリンクを踏ませるか、「町山智浩」名義で既にゾーニングできてると考えるか)という細かい話については判断保留。でも特に必然性がなければ安全側に振っとけば? とは思う。

追記:

町山さんとこのコメント欄のやりとりの続きで macaca さんからお返事を頂きました([id:macaca:20041107])。僕の立場としては半分賛成というところでしょうか。

ミサイルの落ちた先に対する想像力が必要という点は同意します。これは先日の日記([id:rna:20041105])にも書いた通りです。しかし公益性を理由に生理的な刺激による不意打ちを認めて良いかというと疑問ですし、そういうやり方の有効性も疑問です。

意味と無関連に反応してしまうような刺激を、何か意味のある事を訴えるのに使うのは不適切ではないかと思うのです。例えばレイプの凄惨さを訴えるためにレイプビデオを見せるのが不適切なように。

また、残酷な映像を「戦争の真実」と言ってしまうのも下手をすると「トマホーク発射シーン」以上に戦争のイメージを歪めるものではないかと思います。例えばテロで殺された人のむごたらしい映像を使って復讐戦争を煽るのもオッケーなんでしょうか? 僕はそういうのはずるいと思うし、似たようなことを反戦のためにやるのもやっぱりずるいと思う。誘導する方向に関わらず、過剰な刺激で冷静さを失わせて判断を狂わせるようなやり方はアンフェアだと思うので。


*1:イラクの戦場の写真で、頭が吹っ飛んでる死体が映っていた。

*2:町山さんの貼った画像のうち死体の部分はかなり小さかったはず。