ネットの言論は「一方的」?

モヒカン族の方に叱られそうなタイトルですが僕が言ったんじゃありません。昨日行われた中西準子名誉毀損訴訟で原告(松井三郎氏)側の弁護士がそういう主旨の事を言ったのです。専らネットで事件を聞きつけてやってきた人がほとんどの傍聴席にはなんとも言えない空気が。。。

中西準子名誉毀損訴訟とは

まず、この裁判がどんなものか、裁判もある程度進行して論点も絞られてきたのでそれに沿って簡単にまとめます。*1

原告は松井三郎氏(京都大学教授)、被告は中西準子(産総研化学物質リスク管理研究センター・センター長)氏。中西氏が自分のサイトに書いた文章が松井氏の名誉を傷つけたという訴え。

ネットでの名誉毀損なんてよくある話ですが、この件が特異なのは学者が学者を訴えたということ。中西氏の文章も自身が座長をつとめた学術会議での松井氏の発表に対する論評です。

この論評に対して松井氏はメールで中西氏に抗議、中西氏は事実関係を確認した上で非があれば謝罪するとして問題の論評を一時削除します。

上で「謝罪」とありますが削除したことについての読者への謝罪です。論評については「私に非があると思いました」としつつも具体的には「もう一度検討し」「私に非のあることについては、その時点でもう一度謝罪させて頂きます」としています。

その後中西氏は事実関係の確認のため松井氏にメールします。松井氏の発表資料で引用された新聞記事を送って欲しい、その内容によっては自分に非はないというものです。これに対し松井氏は「大変不愉快な思いをしております。 名誉毀損で提訴する準備をしています。」とだけ返信、翌日横浜地裁に提訴します。

そして裁判が始まりますが9月29日の第三回口頭弁論で被告だった中西氏が反訴に踏み切ります。

当初中西氏は自分にも非があるかもしれない(松井氏の発表を聞き違えたまま評価したかもしれない)と考えていたのですが、非公式に録音されていたシンポジウムの録音テープを入手して聞き違えではなかったことを確認し、原告側が根拠のない訴訟を起こしたと判断したからです。

反論の場も与えられず。。。

さて、タイトルの件は昨日の第四回口頭弁論で原告(反訴では被告)松井氏の代理人、中下弁護士が、この反訴に対する反論として述べたことでした。

要約すると「問題となった中西氏の文章は学問的な批判とは言えない」として、以下のような理由を挙げたのです。

  • 会議の場には中西氏もいたのだからその場で批判するべきだったのではないか。
  • それなのに松井氏はホームページ上で反論の場も与えられず一方的に批判された
  • 松井氏の抗議のメールをなぜ公開しなかったのか。一方的な批判である。

中下氏は「反論の場が与えられない」「ホームページ上で一方的に批判」に類似したフレーズを度々使い、そのたびに傍聴席にはビミョーな空気が流れたのでした。正直言って僕自身も笑いをこらえるのに必死でした。

ネットで批判すると一方的なの!? ネットだからこそ反論の場はいくらでもあるんじゃないですか!? 松井氏には一応ご自身のページがあります。大学の教員紹介のページなのでここに反論を書けるものなのかどうかは微妙ですが、その気になれば無料のブログサービスを利用することだっていくらでもできます。このブログだってそうだし。

ていうか、そんなこと言ったら原告側のプレスリリースだって、ネットの掲示板(化学物質問題市民研究会掲示板)で公開されてたってわけですが、これは「一方的」じゃないの!?

メールを中西氏のサイトで公開しなかったことを一方的としているところを見ると、同じ場(サイト)に批判した相手の意見を載せられないのが「反論の場が与えられない」ということなのでしょうか? *2

まさか、中西氏のサイトには掲示板がないとかコメント欄がないとかトラックバックできないとか、そういうところが「一方的」で「反論の場が与えられてない」っていうこと!? プレスリリースは掲示板だったからオッケー!?


*1:このエントリでリンクしている裁判所への提出書類等の写しは環境ホルモン濫訴事件:中西応援団の有志が作成して公開しているものです。書面にあった住所・電話番号等の個人情報は削除されています。また、一部OCRのエラーで化けている部分もあるようです。

*2:もっとも、あのメールは「私信」なので勝手に公開する方がよっぽど問題だし、松井氏のメールには公開しろとも公開していいとも書いていなかったようですが(参照:甲5号証)。