毎日の社説「宮崎事件 類似犯防ぐ環境整えよう」の件。

毎日の社説「宮崎事件 類似犯防ぐ環境整えよう」の件。この社説は色々ツッコミ所が満載ですが簡単に指摘しておきます。

 ビデオの大半は子供向けのアニメだったこともあり、1、2審の審理でも犯行とビデオとの相関関係は解明されなかったが、専門家は、映像は性的欲望を刺激して性犯罪を誘発する、とポルノビデオの横行に警鐘を鳴らした。

いったい何の「専門家」なんですかね? 相関関係も解明されないのに因果関係を語るのは。

性犯罪者は再犯率が高いことから、刑務所での処遇に再犯防止プログラムが導入されたり、法務省が出所者の情報を警察に提供し、動向を把握する制度もスタートした。

まず再犯防止プログラムについて。昨年12月に発表された認知行動療法による性犯罪の再発防止プログラムは、一般に性犯罪が「再犯率が高いことから」導入されたわけではありません。法務省のプレスリリースにも再犯率が高いという記述はありません。

これは一部に再犯リスクの高い加害者がいて、通常の方法では矯正できないため導入しようというものです。なので性犯罪者全員が認知行動療法を受けるわけではなく、スクリーニングを行った上でリスクが高いと判定された加害者に対してのみ行われます。

次に警察への出所者情報の提供ですが、これは「13歳未満の児童を対象とした性犯罪」に限られます。しかし、これも再犯率が高いからではなく、これは子供の被害者の場合ダメージがより深刻なので優先的に対応したと考えるべきです。

報道や警察庁の発表では児童に対する性犯罪の再犯率が高かったかのような印象を与えるものがありましたが、ほとんどが再犯率ではなく再犯者率を比べているため、再犯性の比較としては全く意味がありません。このあたりについては警察庁の広報資料について(日記みたいなモノ。)を参照。

 業界には自粛の動きもあるが、他方で幼児性愛をファッションとするかのような見方もはびこり、児童ポルノ類は公然化したような印象さえ受ける。一昨年の奈良女児誘拐殺人事件の被告は宮崎被告の事件に触発されただけでなく、高校時代にアダルトアニメを見て、女児を性の対象と意識するようになった、と打ち明けている。

 野放し状態に近いアニメや漫画も含め、犯罪行為を正当化するような映像やゲーム類は、社会を挙げて一掃する方策を講じる必要がある。続発する痴漢やわいせつ事件をみても、なぜか性モラルに寛容な風潮が改められないが、人として、幼児に限らず女性を身勝手な欲望の対象とする行為は断じて許されない。そのことを一人一人が自覚し、性犯罪を追放する機運を盛り上げねばならない。

「幼児性愛をファッションとするかのような見方」ってなにそれ? 「萌え」のこと? なんか勘違いしてませんか?

奥村弁護士児童ポルノ類は公然化した?で微妙にツッコんでますが、後続する文章から考えて、ここで言う「野放し」の「児童ポルノ類」というのはアニメ、漫画、ゲームの類のことですから児ポ法でいう「児童ポルノ」ではありません。これは「野放し」ではなく単に合法なのです。

児ポ法でいう「児童ポルノ」の製造や流通が犯罪とされているのは、撮られる側に悪影響があるからで、見る側への悪影響を防ぐためではありません。つまり児童ポルノの製造や流通は被写体となる児童に対する虐待行為であるから処罰されるのです。アニメや漫画等では被写体となる実在の児童はいませんからこの点では全く問題ないのです。

引用が重複しますが、

昨年の奈良女児誘拐殺人事件の被告は宮崎被告の事件に触発されただけでなく、高校時代にアダルトアニメを見て、女児を性の対象と意識するようになった、と打ち明けている。

これはすごい。因果律を超越した主張です。小林容疑者が児童に対する猥褻行為を始めたのは中学生の頃かそれ以前です。「初めて見つかったのは十四歳」ですから。

 幼児性愛者が人間関係を結ぶのが苦手で、年相応の女性と交際ができないと言われることを踏まえ、子供のころから遊びやスポーツ、趣味などを通じて円満な人付き合いを促す工夫も凝らさねばならない。今回の判決を機に、教育やしつけのあり方も見直したい。

これは偏見では? そういう小児性愛者も確かにいますが、普通に女性と交際ができてなお、という人もいっぱいいますし、父親が娘に性的虐待するケース、妻子ある男が加害者になるケース、スポーツ選手が加害者になるケース、等々は少なからずあるわけですが。

そもそも性欲というのが往々にして「人間関係」の維持と矛盾してしまい、そこをどう折り合いつけていくかが問題なのであって、小児性愛に限らず「人間関係を結ぶのが苦手」というのはあまり関係ないのでは。

人間関係を結ぶのが苦手な人は実際人間関係が希薄で人間関係が犯罪の抑止力にならないっていうのはあるかと思いますが、それは性犯罪に限ったことではないかと。