ダライ・ラマ自叙伝より: チベットの法的地位について

中国政府の主張の詳細はよく知らないのですが、チベット側の主張はこうです。

そこで、今、簡潔に述べた歴史を要約すれば、チベットは、何世紀にもわたって、中国と相互尊重の関係を享受してきた、明らかに別個の古い国家である。中国が強大で、チベットが弱く、そして中国がチベットを侵略した時代があったことは事実である。同様に、歴史を遠く振り返ってみれば、チベットが中国を侵略した時代もあった。チベットは、中国の一部であったという中国の主張には、何らの歴史的根拠もない。一九一二年から破滅的運命の年である一九五〇年まで、チベットは他のいかなる国の支配も受けず、完全な事実上の独立を享受してきた。そして現在の私たちの法律上の地位は、一九一二年の時と全く同じである。チベットの法的地位については、近年、国際法律学者委員会が極めて詳細に分析した。そこでチベットの法的地位に関する私自身の意見を表明するよりも、むしろ私はそのきわだって優れた、公平な専門家たちの組織が国際連合に提出した結論を引用したいと思う。その報告書は、一九五五年、「チベット問題と法の支配」と題して出版されている。それにはこう書いてある。
「一九一二年、中国人追放の時点におけるチベットの地位は、事実上の独立の一つとして明らかに描写することができる。そしてすでに説明したように、中国に対する法的屈従のいかなる形式も消滅してしまった、と考える強い法的根拠がある。それゆえに、一九一一年から一九一二年にかけての出来事は、中国の支配から、法的にも、実際においても、独立した完全な主権国家としてのチベットの再出現を示すものである、という意見を、ここに提出する」
チベットわが祖国 ダライ・ラマ自叙伝』木村肥佐生訳 (1986) p103-104

チベット問題と法の支配」は "The Question of Tibet and the Rule of Law" のことでしょうか? 1955年とありますが、公開されたのは 1959 年のようです。