『東大さんがいく!―〈天才+秀才+神童〉たちの、今そこにある危機! (別冊宝島 381)』

ただ、僕自身は、世直し志向は強いけど、癒し志向は強くないんです。実は、現状の世の中で癒されてしまう人間が増えれば増えるほど、社会システムを変えるチャンスは失われてしまいます。癒しのメッセージは現行のシステムの補完物になってしまうということです。これは、癒しに照準を合わせている現代の宗教にも当てはまる理屈です。結局、癒しを必要とする原因そのものに切り込むためには、むしろ人々が癒されないほうがいいんですよ。

だから僕はむしろ、不安を増大させようという戦略を取りつづけてきたつもりなんです。

ところが、この戦略が効きすぎると失敗する。不安になった人が、何でもいいから手近なものにすがっていくことになりますから。実際そうやって、テレクラ規制条例と東京都買春条例ができたわけです。あるフェミニズムの集会に出たら、宮台がテレクラ条例と東京都買春条例のA級戦犯だと言われました(笑)。まったく外れてるとは言えないのは、そんな事情があるからなんですね。
宮台真司インタビュー「僕が「サルの縫いぐるみ」を被るまで!!」

(初出: メディアマーカー)