「いじめ」と向き合う「ストップいじめ!ナビ」に注目

荻上チキさん(id:seijotcp)が代表をつとめる「ストップいじめプロジェクト」による子供のためのいじめ対策サイト「ストップいじめ!ナビ」がスタートした。

サイト開設の動機や方向性についてはシノドス・ジャーナルで代表の荻上さん*1が詳しく解説している。

また、ニコ生で記者会見の様子や特番なども放送している。番組は終了しているがタイムシフト視聴で今でも見ることができる(10/12現在)。

「ストップいじめ!ナビ」が特徴的なのは「いじめをなくす」ことではなく「いじめ被害者を救う」ことに焦点を合わせているところ。

今回の報道により、いじめの「認知件数」そのものは増加するでしょう。しかし、そうした数字にばかり目を奪われてはいけません。いじめが一定の割合で存在する以上、早期介入による解決事例を増やすことで、いじめ・嫌がらせの被害を最小化することが必要となります。
「ストップいじめ!ナビ」――いじめから抜け出すための具体策 荻上チキ - SYNODOS JOURNAL(シノドス・ジャーナル) - 朝日新聞社(WEBRONZA)

いじめ議論といえば、「いじめをなくそう、ゼロにしよう」といった議論がよくされます。しかし、そうした発想では、「いじめなんてなくならないよ」という逆の諦念をすぐひきつけたり、「これが足りない、あれが足りない」と、個別の小さな処方箋への評価を過小に見積もってしまう可能性があります。
「ストップいじめ!ナビ」――いじめから抜け出すための具体策 荻上チキ - SYNODOS JOURNAL(シノドス・ジャーナル) - 朝日新聞社(WEBRONZA)

確かに、「いじめ」を巡る議論には「いじめ」をなくすための制度設計論や、「いじめ」はよくないという呼びかけ、「いじめ」加害者を吊し上げることによる報復など、「いじめ」を憎み、忌避し、消し去りたい、という願望に基づくものが多い。

被害者の立場からすると「いじめ」は自分の世界観を歪め人生をねじ曲げた事件であり、その痛みを贖うには「「いじめ」のない世界」という希望にすがるしかない、という面もある。

しかし現実に「いじめ」は私たちの目の前にあり、「いじめ」のない世界は見果てぬ夢でしかない。それならば、今、私たちにできることは、目の前の「いじめ」と戦う武器を提供することではないか?

「いじめ」被害者に対する呼びかけ、あるいは「いじめ」加害者に対する問いかけ、というのは今までもあった。例えば朝日新聞の「いじめと君」という特集は、著名人からのメッセージを集めたものだ。

このような企画に対して色々な声があるが、どのメッセージも「本気」には違いないと思う。書き手の多くは「いじめ」被害の当事者だった過去を持ち、その言葉には重みがあり共感を呼ぶ。しかし、そんな人たちの呼びかけは決まってこうだ。「変わろう」「行動しよう」。

確かに変わらなきゃいけないし行動しなきゃいけない。そのための勇気も必要だろう。しかし、武器もなく素手で「いじめ」に立ち向かう勇気が必要なのだとしたら、それはむしろ絶望的だ。

「ストップいじめ!ナビ」は子供たちに(そして保護者たちにも)「道具」と「方法」という武器を提供する。人は武器を手にすることで勇気も手に入れられるのだ。

一方で責任ある立場の大人たちには行動をうながす。

真っ先に変わらなきゃいけないのは僕らの方なのだ。


*1:チキさん、と書きたいところだが、ちきりんさんとの混同問題があるのでこの表記。。。