NHK「刑法犯の少年の再犯率 最悪に」は誤報です

まさかと思ったらまた「再犯者率」の間違いでした。

また、非行歴がある少年が再び検挙される割合の再犯率は33.9%と、統計が残る昭和47年以降、最も高くなりました。 警察庁は新たに非行に走る少年が減る一方で悪質な非行を繰り返す少年が増えるという、二極化の傾向が出ているとみて、取締りとともに非行からの立ち直りの支援などをさらに強化したいとしています。
刑法犯の少年の再犯率 最悪に NHKニュース

元になった資料はこれだと思います。

この資料には「平成24年中の再犯者数は2万2,179人(前年比12.8%減)と減少傾向にあるが、再犯者率は15年連続で増加して33.9%となり、統計のある昭和47年以降で最も高い」(p6)とあります。33.9%は「再犯率」ではなく「再犯者率」です。

再犯者率は同書凡例にあるように「刑法犯少年全体に占める再犯者の割合」です。NHKが言う「非行歴がある少年が再び検挙される割合」ではありません。再犯者率の増減からは(よほど特殊な仮定を置かない限り)再犯率の増減はわかりません。単に初犯の少年が減るだけでも再犯者率は増えます。

実際の統計では刑法犯少年全体も再犯者も両方とも減っていますが、初犯者の方がより大きく減っているため再犯者率が増加しているのです。同書によると刑法犯全体で前年比15.8%減(p1)なのに対し再犯者数は前年比12.8%減(p6)です。ここから初犯の前年比を計算すると17.2%減です。

したがって、少なくとも再犯者率33.9%を挙げて再犯率が増加していると言うのは間違いです。実際に再犯率が増加しているかどうかを知るには追跡調査によるしかありません。そのような統計は公表されているのでしょうか? 少なくとも「少年非行情勢(平成24年1〜12月)」にはそのような記述は見あたりません。

NHKに対しては2005年にも「再犯率/再犯者率」の問題について指摘させていただきましたが、何の回答も頂けませんでした。当時指摘した内容はこちらになります。

こちらでは「再犯率/再犯者率」だけでなく累犯の傾向を表すと称するオリジナルのグラフについても統計値の意味の取り違えによる間違いを指摘しています。

訂正していただくと共に、二度とこのような間違いがないようお願いしたいところです。

以上はNHKのご意見・問い合わせフォームに投書するために書いたものです。フォームの入力欄に400文字の制限があるため、投書では要旨とこのブログ記事のURLを伝えることにしました。

なお「再犯率/再犯者率」問題については、つい先日犯人に対する死刑が執行された奈良幼児殺害事件に関する報道をきっかけに、これまで多くの記事を書いています。興味のある方はこちらをご覧下さい。

追記: NHK から回答がありました

ずっと回答がなかったので先日催促の問い合わせをしたところ回答がありました。
誤報とは認めないことを仄めかすような内容でした。

詳細は別のエントリ d:id:rna:20130801:p1 に書きます。



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