バランスのとりかた

はてな住所登録反対の動きについて小倉弁護士からネガティブな反応が。

どうも利用者が権利侵害の加害者になることばかり強調していて、事業者や第三者が権利侵害の加害者になり、利用者が被害者になることもあるという点が置き去りになっているような。それに一連の動きからことさら極論をピックアップして(あるいは穏当な意見も本音はこうだろ?とエスパーしてるのか?)極論をぶつけるような論じ方に不毛さを感じます。

はてなの当初の案ではどちらについても解決策になっていない(住所確認は中途半端だし、プライバシーポリシーも不透明さが残るものだった)わけで、あのまま住所登録が強行されても事態が良くなるとはとても思えないのですが。むしろ、色々紛糾したことで、着地点はそこじゃない、ということがはっきりして良かったと思っています。妥当な着地点を見つけるのはこれからの課題ですが。

「バランスが大切」にある案について:

レンタルサーバ業者(会員に無料レンタルサーバを提供しているISPを含む。)及びBLOG事業者が共同出資で共通IDを管理する会社を設立し、そこで発行されるIDの保有者の個人情報(住所・氏名等)をその新設会社で管理するというスキームが成立するのならばそれを支持します。

これだと単にID管理会社に個人情報が集中してしまうし、そこから情報が漏れた場合に共通IDによるトラッキングまでできてしまうので問題ですし、結局開示請求で被害者(と称する者)が生の個人情報にアクセスできるわけで、不当に開示されてしまった場合に利用者が嫌がらせを受けたりする危険性は変わりません。

訴状に加害者の実名ではなくIDを書けるようにして、裁判所がIDから個人情報を引けるような仕組みができればいいと思うのですがどうでしょう? 例えば公開鍵暗号を使ってこんな感じにできないでしょうか(民事訴訟の場合)。

  • 利用者は業者に個人情報を渡して利用申請。
  • 業者は利用者の個人情報を裁判所の公開鍵で暗号化しIDと対応付けて保存。原本は破棄。
  • 利用者を相手取って民事訴訟を起こす場合は訴状に業者とIDを指定する。
  • 裁判所は訴状のIDに対応する個人情報を業者に開示請求。
  • 業者は暗号化された個人情報を裁判所に開示。
  • 裁判所は自分の秘密鍵で開示された個人情報を複合化し、被告人を特定。訴状を送達したり呼び出したりするのに使う。

こうすると、不当な開示請求で個人情報を入手することは困難になるし、業者からの個人情報が流出しても裁判所の秘密鍵も盗まないと中身が読めないので安全なのでは。