「博士が100人いるむら」のオチはマジなのか?

[社会] カテゴリなのでネタバレしますが、「博士が100人いるむら」のオチは、毎年生まれてくる博士のうち 8% が「死亡または行方不明」という衝撃的なものです。その内実は自殺や失踪であるとも示唆しています。しかし 8% というのはとんでもない数です。にわかには信じられないというのが正直なところ。参考文献などを提示してないので根拠となった統計などがわからないのも気になります。

で、昨日の日記のコメント欄で頂いた情報から辿って、元になったと思われる統計を見てみましたが、このオチはかなり怪しいのではないでしょうか?

平成16年度の統計表によると、平成16年度の博士課程修了者*1 15160人のうち、「死亡・不詳の者」は 1736人、割合は 11.45% で、理科系に限ると 10770人 中の 900人 で割合は 8.36% です。

博士卒以外と比べるとこんな感じです。

  • 博士 11.45% (1736人)
  • 修士 4.38% (3028人)
  • 大学 4.14% (22699人)
  • 短大(昼間部) 1.13% (1236人)
  • 短大(夜間部) 5.84% (130人)
  • 高専 0% (0人)
  • 高校 0.02% (216人)
  • 中学 0.03% (171人)

確かに博士卒が一番多いのですが、自殺率(0.024%)との比較で言うなら大卒や修士卒だって桁違いに多いのです。人数で見ても、20代の自殺者の総数は 3000人 程度、30代と合わせても 8000人程度(参照:性・年齢・原因・動機別自殺者数 平成15年)で、大卒以上で合わせて 27000人 程度いる「死亡・不詳」を自殺等と解釈するのは無理があります。博士卒だけ「死亡・不詳」を自殺等と解釈するのも不合理だと思うのですが。。。

以上、修士過程中退のニートもどきの素人が Google だけを頼りに調査したものなので、嘘かもね。本当はちゃんとした根拠があるのかもしれませんね。現役の院生とかも信じてるみたいだし。

追記: 数字の元ネタはこれらしい

via: [id:gakurouo:20050505#1115223734]

トラバ感謝。やはり大元は「学校基本調査」でしたが、平成12年度の調査結果に基づいた推定値だそうで、母数は理系に限らない全分野です。就職先区分毎の割合を見ると童話のそれとよく一致します。しかし 8% のところは「不明」という区分になっていて、自殺や失踪という解釈はされていませんね。。。

「博士号取得者の就業構造に関する日米比較の試み」にもありましたが、日本では卒業者の追跡調査(ストック)はやっておらず、卒業時点での進路調査(フロー)しかやっていません。上のサイトでも「それ以後どうなったのかというデータは見付けられないでおります」とあるのですが、例の童話をみて「ありそうな話」と感じた人はたぶんストックの感覚(何年間かの間に見聞きした自殺した人、連絡とれなくなった人の割合)と比較してしまっているのではないかなと思いますが、どうでしょうね。

追記: なんか書かされなかったっけな?

「学校基本調査」の卒業者の進路のデータは大学側からの申告によるものと思われますが、そもそも大学はどうやって調べてるんでしょうね? 僕は中退した時に事務室で何か名簿みたいなやつに就職先とか書かされた記憶があるのですが、あれが元になってるんでしょうか?


*1:博士号取得者ではない。満期退学者を含む。また、論文博士は含まない。