青学入試問題のイデオロギー

[id:rna:20050610#p3] の件について。[id:lovelovedog:20050615#p1] のこれ:

やはりどうも納得いかないのは、このテキストを書いた人も、沖縄のひめゆり部隊だった人も、戦争に対して反対する気持ちは(多分)同じだと思うんですが、それを対立する形であおってしまうマスコミ報道のありかたです。

報道が設定した対立軸が間違っているとは思うけど、対立自体はあると思いますよ。例の入試問題の著者を単純に戦争反対と言えるかどうか。

あの入試問題の論調を一言で言えばイデオロギーではなく事実を伝えようということだと思います。正確には事実というよりも意味づけされる以前の感覚的なもの(暗闇の恐怖だとか死体の惨たらしさだとか)を重視するということです。しかし、それが戦争反対につながるかというと怪しいです。9.11 のあのイメージがアメリカ国民にどう影響したのか考えてみるとよいと思います。恐怖から主戦論に至ることだってあるのです。

ひめゆり語り部の語りについて「ショッキング」と言いつつもその内容について一言も触れていないのも気になります。おそらく集団自決(軍による自決強要)の話もあったと思うのですが、これって例え語り方に難があっても退屈とか安易とかの一言で片付けられるものではないと思うのですが。

自決強要の話が教科書から削除される傾向([id:swan_slab:20050611:p2] およびコメント欄を参照)を考えると、書かれなかった事には何らかの意図があるのではないかと勘ぐりたくなるところです。イデオロギーから中立なメッセージを! とか言ってる奴のイデオロギーはどうなのよってことで。

あと、これが入試問題として出されたことについて。[id:swan_slab:20050611:p1] のこれ:

改めて、問題の入試問題を読んでみると、そもそも、これは英語の読解力を試すための文章であるから、文章のもつイデオロギーを批判するのは筋違いであると思わざるを得ない。

逆だと思います。引用前後しますが、

一方、受験生にとってみても、報道を元に深読みすれば政治的匂いも感じることができるが、入学試験の真っ最中に、問題文の読解作業のほかに、筆者の政治的意図まで読み取る余裕はないだろう。

こういう批判的読解のできないような状況で政治的主張を読ませるというやり方自体がずるいと思うのですが。意図は見えないけど内容は伝わるって状況の方がサブリミナル的でまずいのでは? そういうふうに機能することを著者は予見できたはずですし、メッセージの伝達についてあれだけの文章を書いた人がそれを予見できないとは思えません。