またほつまさんとこのコメント欄におじゃましてますが。。。
- ニートの1.3%が(軽度)発達障害の確定診断を受けていた。 (hotsumaのURLメモ)
これ、「自立支援施設を利用するニートの若者 23.2% に発達障害の疑いあり」という読売の報道を受けてのエントリですが、ほつまさんは確定診断のあった 2 人の方に注目して 1.3% という数字を出して「一般人口における広汎性発達障害の有病率は1%程度と考えられている」「ハイリスク群で1.3%という数字は著しく低い」としています。
でもこの二つの数字って直接比べられないのでは? 1.3% の方は受診率の影響を受けた値なので本来の有病率よりは小さい値と考えられます。
読売の記事に出ている調査
読売の記事に出ている調査は自立支援施設を利用するニートから、その一部(155人)をサンプリングした標本調査です。
確定診断を受けた 1.3% (2人)
記事を読む限り 1.3% というのはその155人のうち過去に医師の診断を受けて確定診断をもらった人の割合と考えられます。なのでこの数字は、
標本集団の有病率×標本集団中の有病者の受診率
です。発達障害があっても医師の診断を受けない人がいると考えられるので、一般には有病率より小さい値になるはずです。
一般人口における広汎性発達障害の有病率 1%
「一般人口における広汎性発達障害の有病率は1%程度」のソースになっている調査は一般人口(の 9〜10 歳の子供)からサンプリングした集団の全員を診断した結果です。ほつまさんのコメントによるとこの調査での診断は医師の診断と同レベルとのことなので、医師がそのへんの人をつかまえてきて強制的に診断したら 1% の割合で広汎性発達障害の確定診断が出そうだよ、ということ。要するに有病率です。
ただしここで言う「広汎性発達障害」と読売記事の「(医師の診断した)発達障害」は同じではない可能性があり、ほつまさんは後者は前者を含むより広い状態「(軽度)発達障害」であろうとしています。*1
発達障害またはその疑いがある 23.2% (36人)
読売の記事の 23.2% というのは票補運集団の全員を「行動の特徴や成育歴、指導記録などを心理の専門職らが調べた」結果、発達障害かまたはその疑いがある、と診断された割合です。
診断基準は記事からははっきりしませんが、「その疑いがある」ですから医師の確定診断よりはゆるい基準と考えられます。
ということで、
ほつまさんは「確定診断を受けた 1.3%」を「一般人口における広汎性発達障害の有病率 1%」を比較した上で、前者が後者に含まれない病気も含むことなどから「1.3%という数字は著しく低い」としていますが、受診率のことを考慮にいれていません。ほつまさん自身、
(軽度)発達障害のうち、社会性の問題を生じやすいのは、広汎性発達障害と軽度精神遅滞である。彼らの多くは、療育手帳を交付されずに未診断のまま青年期を迎え、普通高校を卒業し、就職戦線で障害を持たない青年たちと競争している。
としていますから、調査対象における有病率は 1.3% よりもずっと大きいはずです。
というか、サンプルを全部調査した 23.2% の方が受診率と無関係という意味で比較対象としては適切では? こちらは病気の範囲が広いのに加えて診断基準がゆるくて数字が大きめに出てる可能性が濃厚なので、広汎性発達障害の有病率とそのままでは比較できませんが、一般人口に対する似たような調査はあります。
- 軽度発達障害の子どもの支援 第1回(わが子の悩みドットコム)
- そのソースと思われる調査: 「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する全国実態調査」調査結果(文部科学省)
><
これによると、日本の小中学生の 6.3% が「学習面か行動面で著しい困難を示す」とされています。留意事項として、
本調査は、担任教師による回答に基づくもので、学習障害(LD)の専門家チームによる判断ではなく、医師による診断によるものでもない。従って、本調査の結果は、学習障害(LD)・ADHD・高機能自閉症の割合を示すものではないことに注意する必要がある。
とあるように、教師に対するアンケート調査なので微妙なのですが、参考資料に
・学習障害(LD):
「公立学校の生徒の約5%が学習障害を有すると同定されている。」
(アメリカ精神医学会DSM−4 1994)
「6−17歳で5.59%」
(アメリカIDEA第22回議会報告書、教育省 2000)
・注意欠陥/多動性障害(ADHD):
「有病率は、学齢期の子供で3〜5%と見積もられている。」
(アメリカ精神医学会DSM−4 1994)
・高機能自閉症(HFA):
上記のいずれの資料にも記載なし
とあって、これらと比べてもそんなに変な数字でもないと思いますが。。。
自立支援施設での調査結果 23.2% というのは標本誤差を入れても 16.6% 〜 29.9% くらい(95%信頼区間)なので、一般人口に比べて有意に多いと言えるのでは。