グールド『ワンダフル・ライフ』

今読んでるところ。生物の本かと思ったら生物学史の本だった。面白い。アノマロカリスで有名なバージェス動物群の化石の発見から再検討を経て革命的な進化理論を導く解釈に至るまでの歴史を原論文を丹念に追いかけてまとめたもの。ってまだ1/3くらいしか読んでないのでそういう本じゃないかという予想。

分類学的に誤って解釈されていた化石の衝撃的な実像が明らかになったのはゴッドハンド輝なみの空間把握能力を備えた研究者の地味だけど決定的な働きのおかげだそうです。そういう働きが学会ではあまり評価されないことにグールドが怒っていたのが面白かった。

ぺしゃんこにつぶれた物体から立体的な形態を復元する能力、さまざまな向きで化石化した二〇個もの標本から一個の実体を完成させる能力、雄型と雌型に分かれていた断片を結合させて機能を有する全体像を作り上げる能力、これらはどれもみな得がたい技量である。分析的で定量的な業績は誉め讃えられるのに、こうした統合的で定性的な能力が過小評価されるのはどういうわけなのだろう。一方の能力の方が良質で難解で重要だというのだろうか。
グールド『ワンダフル・ライフ』 p154