『墨攻』

漫画『墨攻』は10回くらいしか読み返してないのですがこの日記で度々ネタにする『寄生獣』の次くらいに好きです。で、先月『墨攻』を20回は読み返しているという contractio さんが映画の事を教えてくれたので、これは見なくてはと思い、今日見に行きました。

で、、、結論から言うとダメですこれ。少なくとも原作*1ファンにはおすすめできない内容。よかったのは音楽と主役が男前なことくらいか。王宮の壁壊すのに王様に許可とってんじゃねーよ革離!

一応ネタバレは避けますが、原作では信念の人だった革離がえらくナイーブなキャラに改変されていたり、(原作での)墨子の思想も軟弱なものに歪められているようです。

漫画原作での「非攻」は単に人殺しが悪と言うよりは、人殺しを強いる侵略戦争が悪だと言っていて、侵略者を殺すことについて革離に迷いはありません。ところが漫画原作のファンでもあるというジェイコブ・チャン監督も同じく漫画原作のファンで自分が映画化することさえ考えていたという主演のアンディ・ラウ墨子の「非攻」の理念に矛盾を感じると言っています。

墨攻」の映画化については、まず最初にその豊かな娯楽性に惹かれたことが挙げられます。ドラマとしての流れが素晴らしい漫画だと思っていましたから。ですから、この娯楽性に、私自身が抱いている理想や、「非攻」の理念が正しいのかどうかという疑問などを盛り込むことで、映画化に値するものと判断しました。
ジェイコブ・チャン インタビュー - 映画『墨攻』パンフレットより

ただ、難しかったのは墨子という理念です。彼らは非攻を説いていますが、人を守るためには必ず誰かが傷つくのが当たり前の世の中じゃないですか。私は今でも疑問を持っているくらいです。
アンディ・ラウ インタビュー - 映画『墨攻』パンフレットより

どうも原作での「非攻」を単なる非暴力主義と勘違いしているような。原作で革離が蔡丘*2たちと別れる際に語った言葉を引用します。

戦で人は偉くはならん!!
武力で民衆を抑えつけんとするそのごう慢さ、そのおろかさに―――
天誅をくだすのだ!!
墨攻(3)』(isbn:4091830439) p213 より

天誅ですよ天誅

漫画原作を何度も読んだはずの二人が揃って同じ誤解をしているのを見ると二人の読んだ香港版の翻訳がまともなものだったのかどうか心配になってしまいます。

さて、

鑑賞前に読まずにおいた Apeman さんのレビュー読むか。。。

追記: ネタバレレビュー追加

原作ファンが気になるツッコミどころにツッコミ、という主旨で書きました。激しくネタバレしているのでご注意。


*1:漫画の方。漫画の原作となった小説の方は見てません。映画は漫画版が原作になっています。

*2:映画での扱いが酷かった。。。