また「再犯者率」か!

梅太郎さんところで草薙厚子とかいうジャーナリスト(?)がまた「再犯者率」を「再犯率」と勘違いして不安を煽っていることを知る。

17年の少年の凶悪事件の再犯率は61%となんとも高いということを大人たちは忘れてはいけないでしょう。
[草薙厚子の“のほほん”事件簿:親殺しより引用]

それは、再犯者率だということをジャーナリスト草薙厚子たちは忘れてはいけないでしょう。

ちなみに「凶悪事件の再犯者率」と言っても、その前科は凶悪事件とは限らない事や、17年の大人も含めた全体の再犯者率は約56%で、全体の再犯者率と少年のソレはあんまし代わらないということもジャーナリスト草薙厚子たちは忘れてはいけないでしょう。

[犯罪][再犯率] 親殺し (山咲梅太郎「日記みたいなモノ。」) 書式は一部改変

61% は「再犯者率

再犯率は61%」の元データはこれですね?

凶悪犯(殺人、強盗、放火、強姦)の検挙人員の内訳は以下の通り。

総数 初犯者 再犯者
1,441 562 879

再犯者率 = 再犯者 / 総数」は 61.0%。梅太郎さんのご指摘の通りです。そしてこんな数字に意味はないのです(草薙氏の議論の文脈においては)。

再犯率」と「再犯者率」は違う

ひさしぶりなのでおさらいしておきますが「再犯率」と「再犯者率」は違います。

再犯率」は、処分された犯罪者のうち一定期間内に(あるいは死ぬまでに)また犯罪を犯す者の割合です。それに対して「再犯者率」はある年に処分された犯罪者のうち再犯者が占める割合です。一般に「再犯率」は「再犯者率」とは一致しません。「再犯者率」が同じでも「再犯率」は(理屈の上では) 0% 〜 100% まで幅がありえます。
性犯罪者の再犯

2年前「性犯罪者は再犯率が高いので日本版ミーガン法を!」という議論があったとき、新聞やテレビで散々報道された「再犯率」として提示された数字はほとんどが「再犯者率」でした。経緯はこのブログの[再犯率] カテゴリをどうぞ。

ちなみに、再犯率/再犯者率の話を書くと再犯率は誇張されているという主張だと思われるようですが、僕が言いたいのは再犯者率のデータからは「再犯率はわからない」「過大なのか過小なのかもわからない」「犯罪毎の再犯性の比較にも使えない」ということです。
NHKよお前もか

奈良幼児殺害事件の容疑者逮捕で世論が沸騰した当時、実は本当の「再犯率」の統計は存在すらしていませんでした。法務省と警察省がデータを整理して集計した結果が出たのはその3ヶ月後です。これ、性犯罪についてはプレスリリースが出ましたが、その他の犯罪の再犯率については公開されているんでしょうか?

で、少年犯罪の再犯ってどうなの?

そういうわけで再犯者率を比較する事自体僕は反対なんですが、とだけ言ってもあまり建設的でないので、質的に再犯率に似たデータとして再入所率*1のデータを紹介してお茶を濁したいと思います。元ネタに併せて平成17年のデータです。

平成8年から16年までの少年院出院者の再入院等の状況は,4-4-4-34表のとおりである。
 出院から5年内に再入院した者の比率は,約16%であり,出院(複数回入院した者の場合にはその最終の出院)から5年内に刑務所に入所(初入受刑者としての入所の場合に限る。)した者の比率は,約9〜12%であった。
6 出院者の状況 - (6) 再入院等の状況 (平成17年版 犯罪白書 - 第4編 特集−少年非行 - 第4節 少年院における処遇)

4-4-4-34表から再入院と入所(成人してからの再犯等で少年院ではなく刑務所に入所した者)を合わせて、5年以内再入[院|所]率を計算すると約 25 % でした。

成人については 第4章 成人矯正 - 第2節 行刑施設の収容状況 - 5 再入状況 にあるように5年以内再入所率は約 50% でした。

どちらも凶悪犯に限った統計ではないのですが、成人と比較した場合の一般的な傾向として「少年犯罪の凶悪犯の再犯率」を問題視することに何の根拠があるのか疑問、ということくらいは言えると思います。

しかしこうして見ると少年犯罪者って結構更正してるんじゃないかと思ったり。


*1:少年なので正確には「再入院等」