わいせつ性の問題ではなくプライバシーの問題

先日のエントリへの反応を見て、どういう対立軸を設定するべきかわかってきた気がするので補足。

極言すると児童ポルノの流通はプライバシーの暴露と見なすべきで、その表現のわいせつ性とは無関係に成り立つと考えるべきではないか。児ポ法の提供罪は、他人に見られたくない姿、という情報の流通を防ぐためにあると考えたほうがよい。

ヌード写真は表現次第ではわいせつ性を有しないが、同意なくばらまけばプライバシーの侵害だ。*1 それは顔写真だってそうなのだが、一般に他人に見られたくない部分がうつっているなら侵害の程度はより深刻になる。わいせつであればあるほど深刻になるという傾向はあるだろうが、わいせつでなければ問題ないというものでもない。

そう考えると児童ポルノ規制の厳しさも納得がいく。表現の自由とプライバシーが対立する場合、プライバシーを暴露する事に公益性がなく重大で回復困難な損害を被る恐れがあるなら出版差し止めもある。

しかしそれは事後的に民事訴訟で争われる問題ではないかと言うかもしれないが、児童ポルノの場合は本人が訴訟能力がある年齢になるまで、あるいは被害を自覚しうる年齢になるまで、必然的にプライバシー情報が流通し続けることになり、民事で解決するには無理がある。もし本人が訴えたら認められるであろう、という線を基準にして規制するしかないのではないか。

問題は、どんな映像なら「重大で回復困難な損害を被る恐れ」があると言えるかだが、プライバシー侵害訴訟で適用される、一般人ならそうであろう、という基準で考えるなら、わいせつ性の薄いソフトヌードでもNGではないか。水着姿や下着姿であっても一般的に女性が激しく拒絶するであろう撮り方はNGということになる。

具体的な線引きのラインまでは僕にはなんとも言えないが、幸いにも今回問題になったような映像は大人がやる分には問題ないと思われるので、疑問に思われる男性諸君は大人がモデルの着エロ系DVDの類似シーンを彼女にでも見せて、

  • こういう写真を撮っていいか
  • 撮ったものをネットで公開していいか(顔写真付きで)
  • もし流出したらどのくらい辛いか

というあたりを尋ねてみてはどうか。




僕は彼女がいないのでやらない。

追記: 法解釈論ではない

このエントリは児童ポルノ規制はどういう意味で必要だと考えられるか、という主旨で私見を書いたもので、現行の児童ポルノ禁止法がこういう理屈で書かれているという事を言っているわけではないので、誤解のないように。

*1:同意があれば、それは知られてもいい情報なのでプライバシーではない。しかし、先日述べた通り児童の場合は同意能力に問題があるので、同意はないとみなすべき。