高木徹『ドキュメント 戦争広告代理店〜情報操作とボスニア紛争』

もっとセンセーショナルないかがわしい感じの本かと思っていたが、実は真っ当なドキュメント。

国家間の紛争においてPR戦争を請け負う広告代理店は、一定の倫理規範の制約下で活動しつつも、真実が何かは二の次で、嘘を言わずに嘘をつくような手口も容赦なく使って、依頼人に有利なイメージを作り出し、歴史認識すら決定付けてしまう。

「戦争広告代理店」は、ある意味、依頼人の利益のために最善を尽くす弁護士のような存在でもあり、一概には否定できない。しかし、依頼人の悪行を隠蔽したり、依頼人の敵に濡れ衣を着せたりするような結果まで容認してよいものかどうかは疑問だ。

筆者の高木徹や解説の池内恵は、日本もPR戦争を戦える国になるべきだと主張しているが、PR戦争にも「侵略戦争」はあり、それを是としない「専守防衛」のような立場があっていいのではないか。無論今の日本がそれ以前である事は認めた上で。

(初出:メディアマーカー)