毒殺未遂事件

正直例の女子高校生が何を考えて犯行に及んだのかさっぱりわからない。ブログに文章を残したりしているが、そこに思いが表現されているのか、むしろ偽装あるいは自己暗示のためなのか、被害者の母親に憎しみがあったのかなかったのか等々。だから彼女の気持ちを想像したり感情移入したりというのはどうも難しい。

逆に想像しやすいのは母親の気持ちの方。たぶんこの母親は娘の犯行に気付いていたのだと思う。娘が書いたとされるブログによると体の具合が悪化した母は娘に毒を作って殺してくれととせがんでいる。

こんなたとえは不謹慎かもしれないが、劇画『野望の王国』の征二郎と征五郎の関係を思い出した。兄征二郎の組織を乗っ取ろうとして兄弟を次々と殺害する弟征五郎。弟の野望と陰謀に薄々気付きながらも弟への愛ゆえにそれを表沙汰にできず、なんとか狂気の沙汰を思い止まらせようと遠回しのメッセージを送る兄。しかし野望に燃えるあまり兄の気遣いとメッセージに気づけない弟。

この母親も自分の身の危険よりも、娘がこんな恐ろしい事に手を染めているという事の方をなんとかしたかったのだろう。毒を作って殺して欲しいというのは、これ以上はもうやめてほしい、せめて自分を最後にやめてほしい、というメッセージだったのではないかと思った。そしてそのメッセージは(まだ)娘の心には届いていない。