2ちゃんねるの調査力?

永田議員が公開した堀江メールの真贋について2ちゃんねるで「鑑定」されてるようなんだけど、その鑑定というのがずいぶんいいかげんだと思う。

先に言っておくと、僕はこのメールを本物だと思ってるわけではありません。ガセネタ臭いとは思います。404 Blog Not Foundで指摘されているように、怪しい部分は多々あるし、そもそも証拠能力になるだけの情報が含まれていない*1ので、これを国会で取り上げる民主党の神経(もしくは見識)はちょっとヤバいと思う。

話は戻って2ちゃんねるの鑑定について。essa さんが「偽造確定」を追認しつつ紹介している。

民主党が公開した堀江メールは、2ちゃんねらの調査力によって一日で偽造確定です。
永田議員はハメられた!(圏外からのひとこと 避難所)

そりゃすげぇ! と思ってその根拠を見てみたら。。。

  1. 堀の中の出の部分が違う。掘のと一緒。
  2. メーラーの行揃えから考えると頭になにか文字が入ってる可能性は低い→掘の字確定
  3. X-Senderのeとrが何故か全角に。偽造確定。
  4. Eudoraで、To:> From: の順になるのは、Mac版だが文面フォントはwinのMSPゴシック。

えー。。。公開されてるメールはおそらく FAX で送信されたビットマップ画像を PDF 化したもので、解像度が低くノイジーで、とてもここまでの鑑定に使えるものとは思えない。


「心」原画像(赤)の上にMS Pゴシックのグリフ(黒)を乗せたものまず、フォントの見立てだが、全体のバランスから見ると MS Pゴシックの可能性は高いと思う。でも個々のグリフが正確に一致するかというと厳しい。たとえば「心」という文字、にじみやゆがみのせいかこのくらいはズレる*2

そして「堀/掘」問題。実際文字並べてみた*3ものを見てみると厳しい。先の「心」の歪みや隣の「江」の文字の崩れ具合から考えると識別すべき差が微妙過ぎる。重ね合わせてみてもなんとも言えない。
上から原画像、「堀江」、「掘江」 原画像(赤)に堀(黒)と掘(青)のグリフを乗せたもの

次に X-Sender の e と r が全角という指摘だが、プロポーショナルフォントだけに微妙。下の行の X-Mailer の文字幅との比較が根拠だけどこれも画像の精度から言って微妙。しかも 2ch の検証画像はビデオキャプチャか何かのものすごく粗い画像を元に「鑑定」していて話にならない。

リンク先のレスがdat落ちしてしまってるので記憶に頼って書くけど、「X-Sender:」の最初の e と最後の r が全角という指摘だった。実際 MS Pゴシックでそういうのを作ってみたのだが、全部半角の方がよく一致する。

赤が原画像黒が全部半角のグリフ、青が e と r が全角

*4X-Mailer の方に被せた文字からもわかるように原画像はかなり歪んでいて、数ピクセル単位の差異でもそれを根拠に何か言うのは厳しい状態だと思う。

メールヘッダの印刷順については手元に MacEudora もないので未確認。これは画像の精度は関係ないので調べれば白黒付きそうではある。

ということで、この「鑑定」は全然あてにならないと思うのだけどどうよ? ていうか essa さんは実際に文字並べて追試しましたか? 2ちゃんねるブレインストーミング的なアイデア出し装置としては素晴らしいけど、そこで出てきたアイデアを実際に使うときはちゃんと自分で確認しないとヤバイ。それこそガセネタ掴まされがちなので要注意。


*1:公開されたものから推測できる範囲では。

*2:黒い文字はGIMPで作成。ヒント情報 on、116px。以下重ね合わせ画像では同様。

*3:下の二つは MS P ゴシック 12pt を PS プリンタドライバ(フォントはアウトライン形式でダウンロード)経由で PS ファイルに保存したものを ps2pdf で PDF 化して Acrobat Reader で表示したもの。

*4:x-sender.png の文字は一部の文字列がヒント情報がoffになっていたのでヒント情報onのものに差し替えた。