「小児わいせつの再犯率は84.6%」って本当?

結論から言うとデマだと思われます。

国民民主党代表の玉木雄一郎議員が Twitter でこんなツイートをしていました。

あらかじめお断りしておくと「性犯罪歴のある者を教育や保育の現場に立ち入らせない仕組みが必要」というのは個人的には賛成です。性犯罪の再犯率の相場は1割〜3割(統計の取り方によって異なります)程度で大半は更生すると言ってよいのですが、被害の深刻さを考えればやむを得ないかと思います。

「84.6%」のソース

さて、それにしても「小児わいせつは84.6%と再犯率が高い」というのは初耳です。一体ソースはどこでしょう?と思ったら terazzo さんがそれらしきソースを発見していました。。

平成27年版犯罪白書の特集「性犯罪者の実態と再犯防止」の中にある、以下の記述がソースではないかということです。

同型性犯罪前科のある者の割合は,調査対象事件中の性犯罪により強制わいせつ(その他)型と類型化された者で,44.0%と最も低く,次いで,単独強姦型で63.2%,小児わいせつ型で84.6%の順であった。
平成27年版 犯罪白書 第6編/第4章/第5節/3

これは一体どういう数字でしょう?

まず、この章で調査対象にしているのは「性犯罪前科2回以上の者」です。6-4-5-6図 性犯罪前科の推移(単独強姦型)などを見るとわかりやすいのですが、最後に性犯罪で捕まった犯罪者のうち、前科として性犯罪が2回以上ある者、という意味です。

ここでは最初から再犯者だけを対象にしています。なのでこの章の統計には再犯しなかった者は一切出てきません。なので、 再犯した者の数÷(再犯した者の数+再犯しなかった者の数) であるところの再犯率は出てきません。実際この章に「再犯率」という言葉は一つも出てきません。

では84.6%というのは何でしょう?これは6-4-5-10図 性犯罪前科2回以上の者 同型性犯罪前科の有無別構成比(類型別)を見るとわかりますが、「小児わいせつ型」の性犯罪を犯した犯罪者のうち以前にも「小児わいせつ型」の性犯罪を犯していた人の割合です。

http://hakusyo1.moj.go.jp/jp/62/nfm/images/full/h6-4-5-10.jpg
平成27年版 犯罪白書 第6編/第4章/第5節/3

ここからわかるのは「小児わいせつ型」の性犯罪者の再犯性ではなく、「小児わいせつ型」の性犯罪者の大半は子供ばかり狙う(大人は狙わない)という傾向です。

ちなみに痴漢(公共の乗り物内におけるもの)は100%です。もちろん痴漢の再犯率が100%であるなどというわけではなく、痴漢は痴漢ばかり繰り返す傾向がある、ということです。

そういうわけで、もし玉木氏の挙げた数字のソースが上に挙げたものであるなら、その数字は統計の読み違いによる誤りであると言えます。

実際の再犯率は?

84.6%が間違いだとして実際の再犯率はどの程度なのでしょう?性犯罪一般の再犯率については平成19年版犯罪白書の特集「再犯者の実態と対策」に調査結果が載っています。

7-3-4-16図は,70万人初犯者・再犯者混合犯歴のうち,1犯目が性犯罪であった者(1万898人)について,その後の再犯状況を見たものである。

7-3-4-16図 1犯目が性犯罪の者の再犯の有無別構成比

http://hakusyo1.moj.go.jp/jp/54/image/image/h007003004016e.jpg

 1犯目が性犯罪であった者のうち,30.0%がその後再犯に及んでいるが,再犯の中に性犯罪を含む者は5.1%にとどまっている。すなわち,1犯目が性犯罪であった者のうち24.9%は,その後犯した再犯すべてが性犯罪以外の罪名であったことになる。
平成19年版 犯罪白書 第7編/第3章/第4節/5

いわゆる「性犯罪の再犯」という意味では再犯率は5.1%だったという結果でした。ただし、ここでの「性犯罪」は「強姦,強制わいせつ及び強盗強姦」に限られているので迷惑防止条例違反で検挙されることの多い電車等での痴漢の多くや露出(公然わいせつ)は含まれていません。

なお、平成22年版犯罪白書には強姦の再犯率について上の数字より大きい9.4%(再犯が強制わいせつだったケースを含めると14.7%)という数字が出てきます。*1

7‐2‐3‐1‐1図は,本件の罪名ごとに,調査対象者に占める再犯者の構成比を見たものである。再犯率は,強姦及び強盗で高く,殺人は低い。また,同種重大再犯率は,強姦,強盗及び放火で高く,強姦は,類似再犯(類似再犯及び異種重大再犯のいずれにも該当する者2人を含む。)を含めると,約16%の者が性犯の再犯に及んでいる。

7‐2‐3‐1‐1図  再犯状況(罪名別)
[hakusyo1.moj.go.jp/jp/57/image/image/h7-2-3-1-01.jpg:image:w800]
平成22年版 犯罪白書 第7編/第2章/第3節/1

いずれの数字にしても世間でイメージされているほど高くはないという印象を持つかと思います。では「性犯罪は再犯が多い」というイメージは虚構なのでしょうか?そうとも言いきれなくて、一部の性犯罪者は何度捕まっても性犯罪を繰り返すという事実があります。

性犯罪を3回以上繰り返している者は,107人(分析対象者71万2,898人のうち0.015%,1犯目が性犯罪であった者1万898人のうちでは0.98%)であった。これらの者は,性犯罪に及ぶ傾向が特に強い者であるといえよう。
 これら性犯罪を多数回繰り返した者の中には,性犯罪のみを繰り返す者も相当数いるが,他方で,性犯罪の間に性犯罪以外の罪名の犯罪を犯している者も多い(ただし,性犯罪以外の罪名といっても,公然わいせつのほか,住居侵入,略取誘拐・人身売買,軽犯罪法違反といった,性犯罪と関連する内容を含む可能性がうかがわれる罪名が含まれている場合もあることに留意を要する。)。
平成19年版 犯罪白書 第7編/第3章/第4節/5

性犯罪者の1%程度ですが、累犯傾向の強い者がいるというわけです。こういう人が悪目立ちするという事情はあるのでしょう。また、性犯罪被害の約8割は警察に届け出されない*2ことから、これらの統計にかからない累犯者が相当数存在する可能性もあります。

ここまでは性犯罪一般の話ですが、子供を狙った性犯罪についてはどうでしょう?犯罪白書では特に子供を対象とした性犯罪者の再犯率に関する統計は見当たらないのですが(平成27年犯罪白書にありました。追記を参照。)、過去にそのような統計が公開されたことがあります。

さて、肝心なのはやっと出てきた追跡調査による再犯率。子供(13歳以下)を対象とした性犯罪に限定した統計ですが、20.4% という数字が出てきました。


 1997年までの16年間に摘発された「女児対象強姦(ごうかん)事件」の容疑者506人のうち、昨年6月末までに強姦や強制わいせつ容疑で再び摘発されたのは103人で、全体の20・4%を占めた。
(中略)
同庁の科学警察研究所は、82−97年に摘発した女児(13歳未満)対象強姦事件の容疑者527人のうち、死亡や行方不明の21人を除く506人の昨年6月末までの状況を追跡調査した。強姦や強制わいせつで摘発された103人の内訳は強姦が47人、強制わいせつが76人で、両容疑で摘発された容疑者も20人いた。半数近い47人は、13歳未満の子どもを再び襲っていた。
警察庁の再犯率統計が公開 - rna fragments

先程の強姦の再犯率(強制わいせつの再犯を含めて14.7%)と比べると多いという印象ですが、追跡期間が違うため一概に比較はできません。*3 ともあれ大きな差はないというのが実情と思われます。

繰り返しになりますが、15%や20%だからといって再犯リスクを軽視してよいと言うつもりはありません。前科による特定業種への就労の禁止は再犯しない大半の人の就労の権利を奪うという面はありますが、子供の性犯罪被害の深刻さを考えるとやむを得ないのではないかという考えは理解可能です。

しかし、再犯リスクがどこまでならやむを得ないと判断するかは人によって違います。根拠となる再犯率が84.6%と20.4%では判断が違ってくるという人もいるでしょう。有権者に訴えるのであれば正しいデータを示して根拠に基づいた判断を促してほしいものです。

追記: 子供を狙った性犯罪の再犯率

すみません、子供を狙った性犯罪の再犯率について犯罪白書には見当たらないと書きましたが、「84.6%」のソースと同じ平成27年犯罪白書に載っているのを見逃していました。Twitterh_fukuyama さんが教えてくれました。

再犯調査対象者について,性犯罪者類型別に再犯率を見ると,6-4-4-3図のとおりである。性犯罪者類型によって,実刑に処せられた者の割合や調査対象事件の裁判確定から5年が経過した時点においても服役中の者の割合に偏りがあるほか,出所受刑者に関しては,再犯可能期間に長短があることを考慮に入れる必要があるが,全再犯率は,痴漢型が最も高く,次いで,盗撮型,小児わいせつ型,強制わいせつ型,小児強姦型,単独強姦型の順となっており,集団強姦型が最も低かった。性犯罪再犯率に限っても同様の傾向が認められた。なお,性犯罪再犯(刑法犯)の再犯率が最も高いのは,小児わいせつ型であり,その再犯の内容を性犯罪者類型に当てはめてみると,9人のうち8人の再犯が小児わいせつ型に該当した。

6-4-4-3図 再犯調査対象者 再犯率(性犯罪者類型別)
http://hakusyo1.moj.go.jp/jp/62/nfm/images/full/h6-4-4-03.jpg
平成27年版 犯罪白書 第6編/第4章/第4節/2

小児わいせつ型で9.5%、小児強姦型で5.9% (いずれも条例違反を含む性犯罪の再犯率)、ということです。類型別では小児わいせつ型が一番再犯率が高いとありますが、これは刑法犯のみの場合で、条例違反を含めると一位は痴漢型(36.7%)、次いで盗撮型(28.6%)という順です。

小児強姦型の再犯率が2005年調査にくらべて随分少ないのですが、これは追跡期間が5年と短く、しかも裁判確定から数えて5年なので再犯可能期間がより短い者が含まれることが理由と思われます。*4

*1:強制わいせつを含めた再犯率について文中には「約16%」とありますが約15%の間違いと思われます。

*2:参照:平成24年版 犯罪白書 第5編/第3章/第2節/2

*3:平成22年版犯罪白書の強姦の再犯率は10年間の追跡調査、2005年調査の女児対象強姦の再犯率は7〜22年間の追跡調査。

*4:参照:平成27年版 犯罪白書 第6編/第4章/第4節/1

安倍政権終焉に思う

8月28日の安倍首相の辞任表明で7年8ヶ月続いた安倍政権が事実上終焉を迎えました。ついにか、やっとか、とは思うのですが思いは複雑です。

第2次安倍政権発足前(衆院選の前)の2012年12月2日に書いたエントリに僕はこう書きました。

自民党の経済政策に対する僕の評価は一言で言うと「アクセルとブレーキを同時に踏む」もので、うまくいってもリフレ政策の意義が過小評価されかねず、いずれ政治的な圧力に負けてひっくり返されてしまう可能性すらあると思っています。
自民党の「政権公約」のトップには確かに「経済再生」です。しかし消費を冷え込ませる消費税増税を撤回する様子はないし、効率悪くて利権の温床になりそうな産業政策など、経済にブレーキをかける政策も同時に掲げています。しかも肝心のリフレ政策は党の方針というよりは安倍総裁の持論みたいな扱いで、その一点に賭けるには不安要素が多すぎます。
自民党の経済政策について

今振り返ると概ね予想通りといったところでしょうか。リフレ政策はそれなりに効いたものの、二度の消費税増税でかなりの部分帳消しにされたようです。予想外だったのはそれにも関わらず雇用の改善が続いたこと。それも二度目の消費税増税とコロナ禍で反転しそうですが…

安倍政権下での主な経済指標の動きについてはGYさんの note にまとまっています。

さて、冒頭で引用したエントリで「事情が許す限り参加したいと思っています」と言っていた官邸前デモですが、その後も何度か参加しました。リフレ派だからといって出入り禁止にはなりませんでした。

安倍総理が8%への消費税増税を表明した翌月の2013年11月6日のデモでは最後のコール「総理、わたしたちの声を聞いてください!」の音頭を取らせていただきリフレバージョンでお送りさせていただきました。「わたしたち」のところを「ポール・クルーグマン」「ジョセフ・スティグリッツ」「ケネス・ロゴフ」に入れ替えて消費税増税中止を訴えるものです。

https://rna.sakura.ne.jp/share/diary/IMG_1839.JPG

クルーグマンスティグリッツはリフレ派&ノーベル賞経済学者。ロゴフはむしろ緊縮派で前の二人とは対立する立場ですが「そのロゴフでさえ消費税増税には慎重」という意味で含めてみました。

もちろん安倍総理はこんな声には耳を貸さず予定通り2014年4月に消費税は増税されました。

消費税増税が経済に与えたダメージは政府や日銀の予想以上のもので2015年10月に予定されていた10%への再増税の是非が問われる事態となり、2014年11月18日、安倍首相は再増税を2017年4月に延期することを決断します。これに先立つ2014年11月6日、安倍首相はクルーグマン氏と会談しこれが増税延期の決定打となったとのこと。*1

当時僕は「一年遅いわボケ!」と思いつつも胸をなでおろしたものです。

増税延期の決断が可能となったのは野田政権下で消費税増税が決まった際に民主党(当時)リフレ派の抵抗でねじ込まれた「景気条項(附則第18条)」があったからです。景気の悪化を理由に増税を凍結・延期できるというもの。しかし、安倍総理は景気条項を消費税法改正案から削除してしまいました。

危機感を抱いた僕は2015年11月に与野党に「消費税減税」を求めるネット署名を始めました。

まあ実際にはこの署名を始めるに当たってはウヨ曲折があったのですが…

2016年3月2日の官邸前デモでは消費税減税プラカードを掲げたり上の署名のビラを配ったりしました。

https://rna.sakura.ne.jp/share/diary/IMG_3280.JPG

2016年3月12日には保守系の人が企画した #消費税減税 の「ツイッターデモ」(日時を決めて一斉にタグを付けて声をあげることでトレンド入りを目指すもの)に参加して署名の宣伝もしました。*2

2016年6月1日、安倍総理は消費税10%への再増税を2019年10月に再延期することを表明しました。よく決断したものだなとは思いましたが「増税延期」では不十分なのは明らかでした。

2016年6月12日には松尾匡さんのシノドス・セミナーに参加して署名のビラを配ったり… って、あれよかったのかな?松尾さんは「いい署名ですね」とおっしゃってくださいましたが…

署名はその後だらだらと続けてきたのですが2017年の衆院選前に締め切って自民党公明党希望の党立憲民主党の各党に提出(郵送)しました。

賛同者数は締め切り前に急増して1000人を越え、なんとか格好はつきました。どうも山本太郎氏のこのツイートの影響が大きかったようです。

民進党の分裂など土壇場になってゴタゴタがあって大変でしたし*3 あんなに賛同者数増えて欲しかったのにそれを印刷・送付するとなると結構お金がかかったりで、もう二度とやらねーとか言いながらやってましたが、まあ、いい経験をした、と思っています。

署名提出後は特に各党から音沙汰はなかったです。ちなみに提出前に提出方法の確認のため各党に電話したのですが、公明党は何度電話しても連絡がつかず、自民党は受付の人がいきなり「はぁ?それはうちに言ってくるようなことじゃないと思うんですけど?」などと塩対応、民進党は選挙前で忙しくて直接受け取れないが党本部の警備員に渡してくれれば必ず受け取る旨丁寧に対応していただきました(が、党分裂で結局持ち込みは叶わず)。

色々あって政治運動に関わるのはこれで最後にしようと思って、その後は特に何もしていません。このところ消費税減税の話題を聞かない日はないというぐらいの状況ですが、僕の署名運動が少しは影響… なんてことは全く無いというのは承知ですが、まあ、感慨深いものです。

アベノミクス」には期待はずれな面が大きかったものの不幸中の幸いというか当初最悪のシナリオとして想定していた「アベノミクス大成功からの憲法改正」という流れが回避できたのは正直ホッとしています。

「ヤツらに手柄を渡すな、左派は手柄を横取りしろ」というのは今でも有効だと思っています。左派の一部からはリフレ政策に親和的な「反緊縮」の声が高まりつつあるのですが、最大野党の立憲民主党が消極的なんですよねぇ… 消費税減税も受け入れられずに国民民主党との合流でモメましたし。

現実的には安倍総理の後継がどうなるのかがまずは問題なのですが…

安倍総理辞任のニュースを見て真っ先に思ったのは「俺、失業するんちゃうかな…」でした。

安倍政権の間ずっと体調を崩していて正直いつクビになってもおかしくない状況なのですが、おそらく今の雇用状況では同程度のスキルのあるエンジニアを雇おうとすると高くつくという理由でなんとかクビにならずに済んでいるのだと思っています。雇用が悪化すればクビにして替わりを雇うことも現実的になりますし、そもそも景気が悪化して仕事が減って替わりもいらないということになれば…

まあ安倍総理にもここから目が覚めるような積極財政を打ち出す力はないと思うので、コロナ危機の今の状況ではどのみちヤバいのですが、後継次第では一気にヤバいことになりかねません。

そんなわけで「思いは複雑」というわけです。

*1:参照: https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2014-11-21/NFDA2J6K50Y101

*2:企画した人は日の丸アイコンの人でしたが「消費税減税に右も左もないので」みたいなことを言って左派の参加も歓迎とのことでした。今見たらアカウント凍結されてるけど…

*3:分裂前に署名した人の意向を確認したり。実際片方には署名を送らないで欲しいとの要望もあったので立憲民主党希望の党にはそれぞれ違うバージョンの署名簿を印刷して送っています。

営業継続のパチンコ店名の公表はやめてください

都民ではないのですが、どうしてもお伝えしたくてメールさせていただきます。

28日に休業要請に従わないパチンコ店の店名を公表すると報道で知りました。特措法第四十五条の3に基づく指示を行った場合には公表しなければならないという事情は理解するのですが、現在の状況でパチンコ店の店名を公表するのはたいへん危険です。

元々パチンコ店は経営者に在日韓国・朝鮮人が多いことから、排外主義的政治団体に敵視されています。東京都では2013年以来そのような団体によってヘイトスピーチを伴うデモが繰り返されてきました。

最近では2月29日に銀座で日本第一党による新型コロナを口実にしたヘイトスピーチデモが行われました。この時の攻撃対象は中国人でしたが、主催者である日本第一党はパチンコ禁止を公約にかかげ、桜井誠党首は日遊連への「殴り込み」をかけたこともあります。

このような状況でパチンコ店の店名を公表すれば、それらのパチンコ店に対して排外主義的政治団体の構成員やその支持者による嫌がらせが激化するのは火を見るより明らかです。最悪の場合、放火や打ち壊しといった犯罪行為に発展し、死傷者が出る可能性もあります。

このままでは新型コロナウィルスの蔓延を防ぐという人の命を守るための措置が逆に人の命を危険に晒すことになりかねません。どうかご再考をお願いします。

(初出: 東京都の「都民の声」メールフォームへの投書)

経済対策は商品券より現金でお願いします

新型コロナウィルスによる経済への悪影響への対策として和牛券や旅行券による支援策が議論されていると報道で知りました。私はこのような用途を狭く限定した商品券による特定産業への支援には反対です。経済対策として効果が薄く、公平性の点でも問題があると考えるからです。

たとえば和牛券の場合、和牛券を貰っても消費者の胃袋の容量は同じですから食品の消費量は増えません。和牛を消費することで他の食品の消費量が減ってしまいます。これでは事実上の食品業界から国内畜産業への所得移転になってしまい、食品業界に対して不公平であるばかりか、経済効果も相殺されてしまいます。

もっとも消費者が食費が浮いた分のお金を食費以外の形で消費することにより、経済全体に対しては効果があるかもしれません。しかし、ここで浮くのは現金です。元々商品券を支給するのは現金だと貯蓄に回ってしまう恐れがあるからということではなかったでしょうか。

結局用途を狭く限定した商品券を支給しても経済効果は現金と変わらないのですから、そんなことをするくらいなら現金を支給したほうが事務コストも少なく効果的ですし、公平性の点でも優れています。

どうかご検討をよろしくお願いします。

(初出: 首相官邸のご意見募集フォームへの投書)

献血ポスター問題について

日本赤十字社献血キャンペーンのコラボ企画として漫画『宇崎ちゃんは遊びたい!』のキャラクターのポスターが献血ルーム掲示されたことが議論を呼んでいる。

僕個人としてはあのポスターに嫌悪感は抱かなかったし、むしろ批判者が過剰にエロティックに解釈しているように感じたのだが、そのように解釈されるのも無理はないとも思い、一定の配慮は必要だろうと思うに至った。

この件、かなり話がこじれていて、正直何を言っても徒労に終わる予感しかないのだが、考えの整理と記録のために、なぜそう思うのかをまとめてみた。

クラスタ毎の解釈の差

様々な人が様々に解釈する「宇崎ちゃん」ポスターだが、特に溝が深い「非オタク女性」と「オタク男子」での解釈の違いをまとめると以下のようになる。

非オタク女性:

  • 胸を過度に強調しているように見える
  • 表情は性的に興奮しているようにも見える
  • 絵柄がネットのエロマンガエロゲームの広告のそれと類似して見える
  • 以上の特徴から男性の性的興味を煽る表現に見える

オタク男性:

  • 胸の大きさは強調されているが一般的なキャラクターデザインの範疇
  • 表情は意地悪で小悪魔的なキャラクターを連想させる
  • 絵柄は一般的なマンガ・ゲームで見られる範疇
  • 以上の特徴から殊更男性の性的興味を煽る表現に見えない
    • 現に自分はこの絵にさほど性的興味を抱かない

特に原作を知る人の場合以下のようになるだろう。

  • 宇崎の胸の大きさは作品世界に違和感を導入するためのギミックである
    • 「巨乳」表現は半ば戯画的なもの
    • 作中人物は基本的に宇崎の胸に関心を寄せていない
    • サービスシーンはあるが一般的なマンガにで見られる範囲
  • 宇崎の表情は大好きな先輩の弱みを見つけてイタズラ心を刺激されている表現
    • ポスターを見る人が先輩(桜井)になったつもりで見るのが正しい見方
    • 先輩を小馬鹿にしてイジるのが宇崎なりの親愛の情の表現

解釈の差はどこからくるか

このような解釈の差が生まれるのはなぜか。いくつか理由があると思われる。

記号の多義性に対する認識の違い

まず非オタクの方がオタクにくらべて図像を一義的・記号的に解釈する傾向が強いように思われる。非オタクには胸を強調した表現が「巨乳!エロい!」という記号に見える。記号に過ぎないならば、例のポスターは「巨乳!エロい!」と大書してあるのとさして変わりはない。だとすれば明らかに扇情的だし場違いである。

一方でオタクは一見ステレオタイプなマンガの記号的な表現にも実際には多義性があることを知っているので、その意味を一義的には解釈しないようだ。特に単体のイラストではなく原作があるものならある表現の作品世界での機能や意味付けは様々であり得るので、原作を知らないなら「詳細不明だがとにかく「そういうキャラ」である」とありのままニュートラルに受け止める。

この「ありのまま受け止める」という態度は、現実に胸の大きな女性が目の前にいる時の態度に近い。胸が魅力的に見えるからといって目の前の女性は別に自分を挑発しているわけではない、と認識する態度だ。一部のオタクが胸を強調した表現の記号的解釈に対して「胸の大きな女性を差別している」と感じるのは、そのように解釈する人が自分のように現実の女性にも同様の態度をとるものと誤解しているからではないか。

性的視線の不快さに対する認識の違い

一般に女性は、男性が思う以上に男性からの性的視線に敏感で、それを不快に感じている。女性は自らに向けられた視線が専ら性的な関心に集中していると、人格を持ち尊厳を持った存在としての自分が無視され、人間として扱われていない(モノのように扱われている)と感じる。

これには、女性にとって自らの身体の性的魅力は、第二次性徴に伴い自分の意志とは関係なく発生したものであるが故に、アイデンティティに馴染まないまま浮いた形になりがちであることが関係しているのかもしれない。また、実際に性暴力の被害やその危険に晒される体験があるために、男性の性的関心が女性の尊厳を踏みにじる態度と強く結びついた形で認識されるようになっているのかもしれない。

性的視線というものは、自らがそれに晒された場合に感じるだけではなく、誰かが誰かを性的に見ているということを第三者の立場で感じることもある。それもまたいたたまれない気分にさせられるものであり、その視線が自らにも向けられうることに身震いさせられるものでもある。

そのような性的視線の存在は、女性の性的魅力が強調された視覚的表現(イラストや写真)からも感じられる。そのような表現は、表現者の性的視線の存在なしには生まれないからだ。また、特に商業的な表現は鑑賞者の需要を満たすために制作されていることから、女性を性的視線で見ることへの需要があり、表現はそれを肯定しているように解釈される。

一方で男性の側は、自分が向ける性的視線がそこまで重く受け止められていることが納得できない。まず、性的魅力は女性の個性の一部だと思っているし、そこに関心が向くことがあっても、それで女性の尊厳を無視しているつもりはない。

男性は、女性に人間としての魅力を感じることと性的魅力を感じることは両立していると感じている。ただし、相手の人間としての魅力が不明なままでも性的魅力のみを感じることはありうる。誰もがそうというわけではないが、多くの男性は誰だかわからない女性の裸体に興奮する。

そのことが、男性の性的視線は「女性を性的なモノとして「のみ」見ている」という認識に繋がっているようだ。確かに多くの男性にとって、性衝動は視覚的刺激によって自動的に惹起されるもので、それは「性的なモノ」にのみ反応している。しかし、男性の精神は性衝動に支配されているというわけではなく、精神の別の部分、おそらくは過半を占める部分は目の前の女性を一人の人間として見ている。

とはいえ、男性の性的な視線には独特の雰囲気があるようで、普通でない精神状態を思わせるものがあるらしい。その雰囲気の変わりようは性衝動に精神が乗っ取られたように見えても不思議はないもので、そうではないのだと言ったところで理解を得るのは難しいかもしれない。

女性差別の再生産という観点

女性の不快感というのは単なる気分の問題ではなく、女性差別に関わる問題でもある。女性を性的なモノに貶めることを肯定する表現が公共の場に掲示されることで女性差別が再生産され、将来に渡って女性が不利益を被ることに対する憤りでもあるのだ。

ここで問題なのは、原作のマンガ作品の表現が読者に与える影響ではなく、ポスターとして切り出された表現が原作を知らない人たち(主に非オタクの一般人)に与える影響だ。原作も込みで、そればかりか「萌え」文化全般を敵視している人はいるのだが、そういう人ばかりではないし、これはそういう人たちの主張とは独立に検討に値する観点だ。

差別の再生産について「宇崎ちゃん」ポスターの寄与分などあったとしても微々たるものではないかという意見はあるだろう。しかし、影響があるのだとすれば「塵も積もれば」であり、それが「宇崎ちゃん」ポスター程度の表現が世の中に溢れている結果である以上、「宇崎ちゃん」ポスターだけを無視してよい理由はない。

たとえば米に含まれる有害物質の規制を考えてみよう。日本人がほぼ三食毎日米を食べる以上、一生分の有害物質の曝露量が健康に影響を与える量に達しないように、全ての米について有害物質の濃度を規制するしかない。おにぎり一個分に含まれる有害物質の量が微々たるものだとしても、おにぎり1個を見逃すということはできない。

もっとも、そもそも女性差別の再生産にメディアの影響がどの程度あるのかということについては、長きに渡る議論があるものの結論は出ていない。十分なエビデンスがない以上、法規制のようなハードな規制には馴染まないだろう。予防原則だけで表現の自由に関わる規制を行うことには慎重であるべきだ。

しかし、だからといって、問題提起し対話と交渉によって状況を変える努力を否定する理由もない。ケースバイケースで、なくても困らない程度の表現であれば改められ、それで差別の再生産のリスクが少しでも減るのなら、悪いことではない。

結局ポスターはアウトなのかセーフなのか

ここまで見てきたように、一定のリテラシーがあるか、あるいは原作を知っている者からすれば、「宇崎ちゃん」ポスターに対する不快感はある意味「誤解」に基づくものとも言える。しかし、「宇崎ちゃん」を見るのが初めての一般人、特に女性がこれを不快に思うのにはもっともな理由がある。誰もがオタク的リテラシーを持つべきとも、誰もが原作を読むべきとも言えない以上、不快に思う方が悪いとは言えない。

献血ルームは不特定多数の献血者が献血を行うための場であり、特定の人が献血しにくくなるということになるのは望ましくないであろう。あのポスターがあることで、少なからぬ人がもっともな理由から不快な思いをするために献血しにくくなるのだとしたら、一定の配慮は必要なのではないか。

ポスターがあることで増える献血者がいて、その数がポスターのせいで減る献血者の数より多いのなら、献血の重要性に鑑みてポスターは正当化されるのではないかという、功利主義的な議論もある。しかし、差別の再生産の懸念があるのなら、そのような正当化には倫理的な問題がある。

あのポスターが引き起こす不快感の程度、その一般性、差別の再生産の蓋然性、といった程度問題に関する不確かさがあるので、「やめるべき」から「配慮が望ましい」までグラデーションはあるものの、基本的にはアウトだろうというのが僕の見解になる。

とはいえ、「宇崎ちゃん」のファンからすれば、その表現のエロスに誘引されている面は否定できないにしても、「宇崎ちゃん」が好きなのは単にエロいからではなくて、キャラや世界観を気に入ってのことだろうから、キャラに興味のない人にエロだエロだと言われたら気分が悪いのは十分理解できる。

このエントリが、互いに相手の立場を理解した上で議論する上で少しでも役に立つなら幸いである。

はてなグループのダウンロード

年末にはてなグループが終了予定とのことですが、終了後にグループを閲覧可能にするかどうか未定とのことなので必要なグループはダウンロードしておくことにした。「従軍慰安婦問題を論じる」とか。

以下、結果は無保証なので自己責任で。

基本 wget でミラーするのだけど単純にミラーするとカレンダーを延々辿っていって終わらないので、そのあたりをスキップするようにしてみた。

wget -r -N -l 500 --no-remove-listing --page-requisites --no-parent --convert-links --adjust-extension -w 1 --random-wait --reject-regex '\?mode=reply$|\?mode=edit$|/calendar/?$|/calendar\?.*|/keyword/[0-9][0-9][0-9][0-9]-[0-1][0-9]-[0-3][0-9]|/captcha\?.*|/[0-9][0-9][0-9][0-9][0-1][0-9]$' グループのURL

--reject-regex オプションでスキップするURLのパターンを書いている。グループのカレンダー、日付のキーワード、日記のカレンダーは前後に辿るリンクを無限に辿ってしまうのでスキップ。ついでに掲示板の返信リンク、キーワードの編集リンク、captchaのリンクもスキップするようにした。

これで一応無限に辿ることなくダウンロードできた。リンクの変換も指定してあるのでローカルで閲覧もできるが、Firefox だと(?)掲示板が表示できない。というか、元のサイト上でも表示できない… どうも http://ad.hatena.ne.jp/js/google_afc.js の読み込みが終わらないのが原因らしいので、このスクリプトの読み込み部分を消してしまうことにした。

find ダウンロードしたフォルダ -type f | awk '{ printf("'\''%s'\''\n",$0) }'| xargs sed -i 's/<script language="JavaScript" src="http:\/\/ad.hatena.ne.jp\/js\/google_afc.js"><\/script>//g'

sed -i は指定されたファイルを上書きするので find で間違ったフォルダを指定しないように注意。

上のコマンドだと限定公開の日記はダウンロードできないのだけど、そのへんはwget のクッキー関係のオプションを使えばなんとかなるはず。

人喰いの大鷲トリコ

人喰いの大鷲トリコ、どのくらい進んでるのかいまいちわからないのだけど、少しずつ懐いてきたトリコが言うこときいたり空気読んで助けてくれたりするようにはなってきました。

マップの謎解きは今のところ変にいじわるなところはなし。迷う所ではナレーションでヒントが出る親切設計。ナレーションは大人になった主人公の回想という形で入ってくるのでお節介感なく映画のワンシーンを演じてる気分で聞けます。

立体的で入り組んだマップなので自分がマップ全体のどのへんにいるのかいまいち把握できなくて、あの場所へ行く、みたいな目的意識を持って進むというよりは、とにかく仕掛けが出てたら作動させて前に進む感じ。ICOワンダと巨像もそうだったけど、高所作業多いです。苦手な人は注意。

トリコの生き物っぽさは、見た目の質感や細かい仕草、自律的に行動する部分もよくできていると思います。犬や猫に似ていながらも巨大生物らしさがあり、親しみやすさと得体のしれなさのバランスが絶妙です。人間との距離感も近すぎず離れすぎず、野良猫みたいな感じでリアル。

巨大な生物がそばにいて、高低差の激しいマップを探検する、というシチュエーションなので、上下方向の視線移動が必然的に多くなるのですが、カメラワークが映画的というか、コントローラーの操作にリニアに応答しないところがあって、ちょっと難あり。あわてずのんびりプレイするほうがいいゲームみたいです。

というか、そもそも横長の画面で視界が制限されてる感じが強いのが辛い… こういうゲームこそVRが向いてるのかもしれません。PSVR対応アップデートとかあるかなー。

まあ、このゲームのためにPS4買った甲斐はあったと思えるだけのものはありました。随分待たされたし、危うくPS3買わされるところだったけど…




(初出: facebook)