ラインを超えて

先日JR品川駅で見た横断幕。

「ルールを守って国際化」法務省東京入国管理局

i18n のことですか!? と思ったらそんなわけなくて入国管理局のスローガンらしい。

仕事の途中だったのでよくわからないまま通過したのだけど、仕事帰りに反対側を見ると(写真撮れなかった)不法就労外国人対策キャンペーンとか書いてあってのけぞった。

Web 1.0 風味の入管の公式サイトによると、

法務省入国管理局では,「ルールを守って国際化」を合い言葉に出入国管理行政を通じて日本と世界を結び,人々の国際的な交流の円滑化を図るとともに,我が国にとって好ましくない外国人を強制的に国外に退去させることにより,健全な日本社会の発展に寄与しています。
入国管理局ホームページ

なんか堂々とすごいことが書いてあるような気がするのは気のせいでしょうか。「我が国にとって好ましくない外国人」とか。。。

          ____
       / \  /\ キリッ
.     / (ー)  (ー)\   我が国にとって好ましくない外国人を
    /   ⌒(__人__)⌒ \   強制的に国外に退去させます! 
    |      |r┬-|    |
     \     `ー’´   /
    ノ            \
  /´               ヽ
 |    l              \ 

そんなこともあってこの本を少し読み直したりした。

ブエノス・ディアス、ニッポン―外国人が生きる「もうひとつのニッポン」

ブエノス・ディアス、ニッポン―外国人が生きる「もうひとつのニッポン」

この本は国籍法問題*1で、弁護士のいしけりあそびさんのブログを読んでた頃に買った本。ていうか著者のななころびやおきはいしけりさんの別のペンネーム。*2

本文にストーリー、欄外に用語等の注釈、章末に専門的で詳細な注釈、という構成で、とっつきやすく読める上に、より深い話への取っ掛かりもしっかり用意してあり、いろんな人にオススメできる本です。

この本に人身売買で日本のヤクザに買われて児童売春に従事させられたコロンビア人の少女の話が出てくるのですが、いしけりさんを散々振り回した挙げ句結局赤ちゃん抱えて強制送還されてしまいます。

と、こんな単純な紹介のしかたでは伝わらない微妙な部分がいっぱいあって、人によっては「経緯は同情するけどそれフツーに「我が国にとって好ましくない外国人」じゃない?」とか言うかもしれない。だけどねえ。。。

あるいはこんなことも考える。なぜいしけりさんはその少女を手放してしまったのだろう。これが例えば『ブラックジャックによろしく』の主人公だったら危ない橋を渡ってでもその子を逃がして匿おうとしたかもしれない。

もちろん常識的に考えてそこまでする義理も筋合いもない。でも、それを言うならいしけりさんの奔走ぶりは僕の常識からすれば既に一線を越えているようにも見える。それでもどこかでラインを引いている。引かざるをえない。

それはこの国が「健全な日本社会の発展」を理由に引いたラインとどう違うのだろう。もちろん、そのラインが憲法や条約が引いた太いラインと交わってしまうのは問題だし、その矛盾を突くことは必要だけど、いずれにせよラインは引かれる。引かざるをえない。

だからこそラインを踏み越えることに意味はあるのだけど、国家の引いたラインを越えてもなお、越えられないラインがあるのだ。ラインを巡る闘争を越えた何かを抱え込まなくては、ただ虚しさに打ちのめされてしまいそうだ。その何かが何なのかよくわからないけれど、それは確かに存在するのだと、そんなことを考えた。


*1:改正反対論が急浮上したのが「問題」という意味。

*2:ちなみにいしけりさんのブログはネグリ来日中止事件の件で知りました。