Webサイトは「言論」か「場所」か

「無断でリンクしていいのか」というよくある問題について。

昔から Web をやってた人だと「いいに決まってる、Webとはそういうものだ」と即答する人が多いと思います。Web の発明者である Tim Berners-Lee の発言(Links and Law: Myths)が根拠として挙げられることも多いようです。このあたりは kanzaki.com の「リンクと権利と責任」がよくまとまっています。

僕も基本的には「リンクは自由」に賛成なんですが、「リンクは自由」の主張では Web サイトを「言論」あるいは「テキスト」の一種として扱い、「言論の自由」の文脈でのみ論じられがちな点は不満です。Web サイトには「場所」としての側面があり、リンクは「道路」のように機能することがあるからです。そういう観点で見ると著作権言論の自由をベースにした議論では不十分だと思うのです。

掲示板やブログなど読者が書き込みできるようになっているサイトでは特に場所としての側面が重要になります。掲示板へのリンクは単なる言論の参照ではなく人の流れを変える交通の変化として機能します。

内輪でひっそりやってる掲示板がニュースサイトや2ちゃんねるなどで晒され、流れてきたはしゃぎすぎに踏み荒らされる、といった光景は長く Web を見てきた人なら何度も目にしてきたはずです。ちょうど閑静な住宅街の近くにコンビニができて若者がたむろするようになりゴミや騒音や雰囲気の悪化が問題になるようなものです。

ここでやっかいなのは、問題を起こしているのはリンクをたどったはしゃぎすぎの人らであって、リンクした人ではないということ。こういう場合リンクした人に責任があるのかないのか。責任があるとした場合、リンクする側は、自分のサイトの客層を把握してリンク先の空気を読んでリンクするかどうか決める、という負担を抱え込むことになってしまいます。事前に許諾をとるという方法は、場合によっては相手方にも負担だし、相手からリンク元の客層が見えなければ結局トラブルは起こりうるので、単に言質を取って文句を言わせないだけということになりかねません。もちろん批判や反論がやりにくくなるという言論の自由への萎縮効果も問題です。

そんなわけで、リンクに法的規制は不適切だとは思いますが、まあ「空気読め」くらいの事は言われても仕方がないという程度の道徳的な価値観が共有されたらなぁ、とは思います。でも、合法/違法 と 善/悪 が混同されがちな昨今ではそういうのって難しいかも。

ということで、僕は内輪でやってるっぽい掲示板や、うちの客層*1と合わなさそうな掲示板は直リンしない方針でやってます。必要があってリンクする場合はトップページにリンクします。はてなキーワードが使える場合はそれを。ワンクリックの差しかなかったりする事も多いでス*2が、はしゃぎすぎにとってワンクリックの壁はそこそこ高いようなので。


*1:左翼とかオタクとかフェミニストとか「ある種の子供好き」とか…

*2:誰かの真似w