倫理と道徳

Re:[id:strange:20051207#p2]

宮台真司風に「倫理=内的確かさ」「道徳=外的確かさ」というふうに区別すると、倫理はともかく道徳はみんなが従わないと成り立たないんじゃないかな。

たとえば「うそをついてはいけません」という道徳は、共同体の中で他人がうそをつくことを予期して余計な身構えをせずに済むようにしたいからあるわけで、うそをつかない自分は素晴らしいっていう価値観ではない。だから、この道徳に依存する社会ではうそつきが一定数存在することは社会不安を引き起こすことになる。

だから「オマエは道徳的でいいけどそれを他人に押しつけるな」って言うのは無理な話。ていうか実質「道徳を諦めて不安の中で生きろ」*1って言ってるようなもの。そう言ってもいいけど(というか僕はそれを言うけど)、それは「オレの幸せはおまえの安心に優先する」っていう宣言であるということは自覚した方がいい。

根本的に「幸せとは「不幸でないこと」ではない」という感覚が共有されないことには道徳の押しつけはなくならないと思う。

逆に、倫理というのは倫理的であること自体に価値があるから、裏切られても迫害されても人に押しつけなくても幸せでいられる。福音伝道主義みたいに倫理コード自体に感染性がある場合は別だけど。


*1:あるいは「道徳的なサークルの中でだけ安心しとけ」