宗形真紀子『二十歳からの20年間―“オウムの青春”という魔境を超えて』

二十歳からの20年間―“オウムの青春”という魔境を超えて

二十歳からの20年間―“オウムの青春”という魔境を超えて

オウム脱会信者(現在は「ひかりの輪」で活動中)の自叙伝。意外に面白かった。神秘体験に導かれて入信したオウムの過ちに気付くのもまた神秘体験。なんというか自分の意志で選択するということがない人なのだが極端に自罰的で自分の欲望を夢や幻覚の形でしか自分自信に伝えられないような、そういう人らしく、今ではその自覚もあるらしい。でもやっぱり偶然や不随意的な心の動きに身を任せて気付きを得るという形で身の振り方を考える傾向が今でも強いように見える。

宗形氏はオウム脱会後「内観」というのをやってて、意識して人との関係を洗い出して振り返ることで他者への感謝の気持ちとかが育まれているらしいけど、これは悪くない話だとは思う。けど、自分一人で生きているのではない、生かされている、というのは裏返すと主体性の放棄に繋がりかねないよなぁ。

女性は特にそうだ、という偏見があるのだけど、自分の人生をある大きな物語の中に埋め込んで、意味のある役を演じたと認識することで過酷な人生の中でも精神が安定する、っていう人、結構いるような。脈絡のない瞬間の連続みたいな人生には耐えられないということなのか。

まあ、人生は自分の力で切り開くべきだし、お前が本気ならいつだってそうできるのだ、というような男性に押しつけられがちな規範が少ない&実際そうするための手段が奪われている、というのが「女性にありがち」ということなのだろうけど。

(初出: メディアマーカー)