インフルエンザの死亡率はちょっと難しい

菊池さんも指摘しているようにタミフル問題で忘れられがちなのが、インフルエンザのリスク。

よく見る「インフルエンザによる死亡者数」というのは厚生労働省の人口動態調査の死因別死亡統計がソースで、インフルエンザの流行の状況によって大きく変化しますが、多い年は1200人くらい。2003年を例にとると患者数が約920万人、死亡者数が約1200人で、死亡率0.013%くらい、、、と思いきや、実際にはもっと多いのです。

というのは、この統計だと「インフルエンザから二次性の細菌性肺炎を続発して死亡に至った事例」が含まれないため。かといって肺炎死亡を全部インフルエンザのせいにするわけにもいかず、本当の死亡率というのはちょっと難しい。そこでWHOが提唱したのが「超過死亡」という指標。これは「インフルエンザが流行したことによって、インフルエンザ・肺炎死亡がどの程度増加したか」を表す推定値です。

これらの諸問題を是正するために世界保健機関(WHO)は、「超過死亡(excess death, excess mortality)」という概念を提唱している1)。超過死亡とは、インフルエンザが流行したことによって、インフルエンザ・肺炎死亡がどの程度増加したかを示す、推定値である。この値は、直接および間接に、インフルエンザの流行によって生じた死亡であり、仮にインフルエンザワクチンの有効率が100%であるなら、ワクチン接種によって回避できたであろう死亡数を意味する。この、インフルエンザの流行によってもたらされた死亡の不測の増加を、インフルエンザの「社会的インパクト」の指標とする手法について多くの研究がなされ、現在の国際的なインフルエンザ研究のひとつの流れとなっている。
インフルエンザ・肺炎死亡における超過死亡について

ここ数年の統計はこんな感じ。

シーズン 患者数 超過死亡数 ソース
2003/04 923万人 2,400人 The Topic of This Month Vol.25 No.11(No.297)
2004/05 1,770万人 15,100人 The Topic of This Month Vol.26 No.11(No.309)
2005/06 1,116万人 6,849人 The Topic of This Month Vol.27 No.11(No.321)