厚生労働省のタミフル問題調査研究について

以前紹介した報告書とその反論、あれからざっと読んだのですが、統計解析のあたりは僕には難しすぎてどちらもよくわからないというのが正直なところ。統計学ちゃんと勉強した人に解説して欲しいです(僕は大学で統計学の授業とってません)。

ただ、厚生労働省の研究で気になったのは、データ収集に使った調査票には昨今の報道で問題になっているような徘徊とか飛び降りとかに繋がるような直接的な行動を区別するような項目分けになってなくて、特に危険な異常行動が選択的に増えたり減ったりという現象があっても、調査から漏れてしまうのではないかということ。

インフルエンザに伴う随伴症状の発現状況に関する調査研究の異常言動関連の調査項目は以下の通り。

  • おびえ、恐怖の表情
  • 映像的な幻視幻覚の表現
  • うわごとを言う、突然大声で歌い出す
  • 理由なく怒り出す、泣き出す、ニヤリと笑う
  • 自分の指を食べ物のように噛む
  • けいれん
  • 意識の消失

調査票には、どのような症状が上の項目(「けいれん」を除く)に該当するのか具体的に説明されています。

◇おびえ、恐怖の表情
今まで聞いたことのない様な声でうめき、すごくおびえた表情。
意味不明な言葉を叫んだり、泣いたりしていた。
ずっと独りでしゃべり続けた。ぎゃーぎゃー叫び続けた。

◇映像的な幻視、幻覚の表現
・「象がきた!」「セーラームーン!」など一方的にしゃべった。
・ついていないテレビを指さして、「猫が来る」「お花畑がたくさんある」などと叫んだ。
・「ライオンが・・・」「虎が・・・」とうわごとのように怖そうに言った。
ピカチュウ!と言って、すごい力で暴れまわった。

◇うわごとを言う、突然大声で歌い出す
・誰かをしかるように「め、め」と何度も言っていた。
・自分の言いたいことだけを興奮して一方的に話していた。
・奇声をあげていた。
・突然、赤ちゃんのようなしゃべり方で訳の判らないことをしゃべっていた。
・突然、大声で数を数え始めた。
・知っている言葉を、取り留めなくしゃべり続けた。

◇理由なく怒り出す、泣き出す、ニヤリと笑う
・けいれんが始まる前に、突然理由なく怒り出した。
・夜中に歌を歌ったり、ニヤリと笑ったりした。
・枕に頭を打ち付けながら、ギャーと泣き叫んでいた。
・自分の手、指を「なんだ、これ」と言って、笑いながらベッドの柵に打ち付けていた。
・何かに向かって、突然しゃべり始めた。

◇自分の指を食べ物のように噛む
・自分の指をハムだ、ポテトだ、と言って囓りついた。

◇意識の消失
・突然倒れ込み「目が回る」と叫び、その後意味不明の言葉を数秒間しゃべり、やがて意識がなくなった。
・意味不明な言葉を繰り返しながら、意識がなくなっていった。

セーラームーンピカチュウ。。。具体的です。 いや、それはどうでもいいですが、昨今報道されているような事故に繋がりそうな体を動かす系の例は「映像的な幻視、幻覚の表現」「理由なく怒り出す、泣き出す、ニヤリと笑う」にありますが、項目の主旨が「行動」に力点を置いていないので、これだとただの幻覚、ただの感情表現とごっちゃになってカウントされてしまいます。

もっとも、徘徊や飛び降りに繋がるような極端な行動はごく稀でしょうから、5千人程度の規模のこの調査でそれを調べても結果的には意味がなかったかもしれませんが、もうちょっとその前兆としてフィットするような項目分けができなかったものかとは思います。



トラックバック: