二つの肖像権

肖像権にはプライバシー権パブリシティ権があります。プライバシー権は人格権で、パブリシティ権は財産権。プライバシー権は守られるべきだと思いますが、パブリシティ権については原則として表現の自由などの権利が優先されるべきだと思います。

司法の判断

専門でないので詳しくないですが、とりあえずサッカーの中田英寿選手の批評本での肖像使用について、パブリシティ権の侵害を認めなかった判決があります。

〔判示・認定事項〕 

  1. 著名人を紹介,批評する目的で書籍を執筆,発行することは、表現・出版の自由に属し、本人の許諾なしに自由にできるから、書籍の題号や装丁にその氏名,肖像を用いることは当然であり、原則として本人はこれを甘受すべきであるから、本件書籍の出版行為が原告のパブリシティ権を侵害するということはできない。
  2. 原告に関する私生活上の事実は、一般人の感性を基準として、公開を欲しない事柄で一般の人々に未だ知られていないものは、公表されたことによって重大な不快感を原告はおぼえるから、本件書籍にこれらのものを掲載したことは、原告のプライバシー権を侵害することになる。
  3. 詩を掲載した中学の卒業文集は300部以上配布されたことから、公表権の侵害とはならないが、本件書籍に詩を掲載した行為は、著作権法上許された引用といえないから、複製権の侵害となる。

プライバシー権の侵害を認める部分は「原告の出生時の状況、身体的特徴、家族構成、性格、学業成績、教諭の評価等、サッカー競技に直接関係しない記述」に関するものに限られ、サッカー選手としての活動に関する記述・写真については侵害にならないという判断です。

ネットでの肖像の利用について

一般に公開済みの肖像についてはプライバシーにはあたらないので、紹介や批評の目的で利用するのは許諾なしでも問題ないと思います。画像自体の著作権はまた別ですが、これも引用としての要件を満たす限りは問題ないはずです。

しかし画像だけをアップするような使い方は肖像権(パブリシティ権)の侵害になるかもしれません。いずれにせよ引用の要件は満たさないので著作権の侵害は成立すると思います。

アイコラについて

アイコラについてはいわゆる肖像権とは別に名誉毀損の問題があります。【レポート】アイコラが照射するインターネットの光と影 - パネルディスカッション(1)より:

別所氏は「アイコラには3つの問題点がある。一つ目は、肖像権、パブリシティ権を侵害していること。二つ目は、著作権、人格権、複製権を侵害していること。三つ目は、名誉毀損だ。人の感情を害し、侮辱していること。これら3つの点をクリアしているようなアイコラなどありえないだろう」としており、それぞれの立場から、アイコラを否定する。