芹沢一也『ホラーハウス社会』

ホラーハウス社会 (講談社+α新書)

ホラーハウス社会 (講談社+α新書)

日本における少年犯罪と精神障害者の歴史と現在を批評した本。解説は藤井誠二。タイトルの「ホラーハウス社会」というのは「恐怖の文化」(『アメリカは恐怖に踊る』)+エンターテイメント? 終わりの方で地域の防犯運動が子供を巻き込んでレクリエーション化してるのを根拠にそういうことを言っているのだけど、論証が弱い気がする。

藤井誠二は犯罪被害者視点からやや批判的な解説を付けている。最近は「赦す被害者」という物語化を求めるような揺り戻しがあって「赦さない被害者」たちを苦しめていると。でも決然とした「赦さない被害者」という物語も「赦す被害者」に腰抜けのイメージを押しつけて苦しめてはいないか。

そもそもここで言う被害者というのは実は被害者遺族だったりして、だからこそ自分では気持ちに決着をつけられない(愛する者を裏切ったような気持ちになるから)、ということもあると思う。

(初出:メディアマーカー)