はてブで id:perfectspell さんとリフレ政策についてやりとりがあったので、まとめつつ続きを。
2008年に物価が上がったけど、景気は上向かなかったけど、リフレってホントに効くの? という話から。
perfectspell "インフレだとお金を使いたくなる"は実需あっての話かと。08年の値上げラッシュ時は消費を控える傾向だった。/アルゼンチンは99-01年までデフレで02年が41%のインフレ率。/英はインフレ率急上昇で今年1月に中銀総裁が釈明 2010/05/08
これに僕がメタブでコメントしてやりとりが始まりました。
rna >id:perfectspell 08年の物価上昇は原油高のせい。コアコアCPIはほとんど上がってません。コストプッシュ型のインフレでは所得が増えないので買い控えを招きむしろデフレを進行させます。d:id:koiti_yano:20080130:p1 2010/05/08
perfectspell >id:rnaさんメタブ 所得先行のインフレなら消費も旺盛になると思いますがリフレは確か物価先行ですよね。/家計消費支出は実質賃金に左右されるのかな、と。http://d.hatena.ne.jp/satohhide/20091202/1259764710 2010/05/09
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rna >id:perfectspell インフレ予想で貯蓄が投資や消費に回るところから始まるので物価上昇の前に賃金が上がると思います。また、過去の日本ではインフレになると実質賃金は上昇しています d:id:nabezo-r:20080606:1212764373 2010/05/10
key_motar ↑それは高度成長+所得倍増の結果としてインフレが生じたという話では。 2010/05/10
perfectspell >id:rnaさん↑ リフレも賃金先行とは意外でした。ただコストプッシュ型に負けてしまう「インフレ予想」の弱い消費促進効果で賃金上昇までたどりつけるのかな、と。/ 過去日本は成長期のインフレかと。 2010/05/10
kmori58 戦後一番インフレ率が高かった1974年の成長率はマイナスでしたが >id:key_motar 2010/05/11
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というわけで、メタブが積み上がっていくのも一覧性に欠けてわかりにくいのでエントリでお返事します。
一応「リフレ派」シンパの立場からお返事します。「リフレ派」と言っても色々なのですが、僕が一番影響を受けているのは飯田泰之さんの著作です。
僕自身は経済学は全くの素人で、一般向け啓蒙書を何冊か読んでいる程度です。経済学の教科書的な物は少し目を通したことはありますが、真面目に勉強して読み通したものはありません。その程度なので色々勘違いもあるかと思いますが、とりあえず。。。
リフレは何を目指すのか
ちょっと回り道になりますが「リフレも賃金先行とは意外でした」というコメントもあったので、リフレが何を目指すかという話から。
リフレーションというととにかくインフレにするのが目標みたいに思われがちなようですが、そういうわけではありません。「インフレ目標」という言葉が良くないんですかね。。。インフレはリフレ政策を実行する中央銀行にとってのテクニカルな目標です。
じゃあ何を目指しているかというと、平たく言えば、金持ちが抱え込んでいるお金を放出させて世の中の金回りを良くすることです。
そのためにやるのが「予想インフレ率を上げる」ことです。お金を持っている人や企業がインフレを予想すれば、物価が上がる前に消費や設備投資にお金を回します。そうして物やサービスが売れて、仕事が増えると賃金が上がったり雇用が増えたりします。
もっとも、インフレがある程度持続すると予想しなければ、そうは行きません。近いうちにインフレがおさまって再び物価が下がると予想すれば買い控えも出てくるでしょう。
なので、日銀がお札を刷りまくるとか国債買いまくるとかしてマネーの総量を増やすというのは、そのこと自体が目標ではなく、人びとのインフレ予想を確固たるものにするための布石です。
人びとの、持続的にインフレが続く、という将来予想に基づいた行動が、自己成就的に持続的インフレをもたらす、というのが理想です。
以上は、飯田泰之さんのブログインフレの起こし方 - こら!たまには研究しろ!!を元ネタにしたつもりです。
2008年の物価高
2008年の物価高は原油高の影響によるコストプッシュ型インフレです。生鮮食品とエネルギーを除いた消費者物価指数(コアコアCPI)はマイナスです。*1
原材料費の輸入価格の上昇分を製品価格に転嫁しても利益は増えませんから「金持ちが抱え込んでいるお金を放出」という流れにはなりません。消費者から薄く広く集められたお金が原産国に流れるだけです。
もっとも、人々が「原油価格は上がり続ける」と予想するなら、安いうちに石油を使いたい、石油を使う事業を前倒しに進める、という動きも出てきたのかもしれませんが、実際にはリーマンショックの影響もあって原油価格は2008年7月をピークに急落、年末には2007年以前の水準以下まで下げてしまいました。
また、企業は2004年度から2008年度まで一貫して物価下落を予想してきました。*2
perfectspell さんの「コストプッシュ型に負けてしまう「インフレ予想」」というあたりの意味がとれなかったので、とりあえずブコメで書いた内容を詳しく説明してみました。こんな説明でよろしいでしょうか?
高度経済成長期以降のインフレ
リフレで物価より先に賃金が上がってくれるのか、という疑問に対して、所得の増加とインフレ率の関係について(その2) - 鍋象のひとりごとを引いて過去のインフレ期には物価上昇率より賃金上昇率が大きかった、という話をしたのですが、それは高度経済成長期の話でリフレで同じになるとは限らないのでは、という趣旨の反論がありました。
確かに条件が違うので同じになるとは限らないというのはその通りだと思います。ただ、約30年間ほぼ例外がないことは重く見るべきではないでしょうか。
ここで示したデータには高度経済成長期が終わったとされる1974年からバブル崩壊までの安定成長期を含みます。インフレ率で言うと5%以下のデータが過半を占めていて、単に高度経済成長期だったから、とは言えません。
アルゼンチンとイギリスの話
これについてはまだ勉強中なのでまたいずれ。。。