安倍政権終焉に思う

8月28日の安倍首相の辞任表明で7年8ヶ月続いた安倍政権が事実上終焉を迎えました。ついにか、やっとか、とは思うのですが思いは複雑です。

第2次安倍政権発足前(衆院選の前)の2012年12月2日に書いたエントリに僕はこう書きました。

自民党の経済政策に対する僕の評価は一言で言うと「アクセルとブレーキを同時に踏む」もので、うまくいってもリフレ政策の意義が過小評価されかねず、いずれ政治的な圧力に負けてひっくり返されてしまう可能性すらあると思っています。
自民党の「政権公約」のトップには確かに「経済再生」です。しかし消費を冷え込ませる消費税増税を撤回する様子はないし、効率悪くて利権の温床になりそうな産業政策など、経済にブレーキをかける政策も同時に掲げています。しかも肝心のリフレ政策は党の方針というよりは安倍総裁の持論みたいな扱いで、その一点に賭けるには不安要素が多すぎます。
自民党の経済政策について

今振り返ると概ね予想通りといったところでしょうか。リフレ政策はそれなりに効いたものの、二度の消費税増税でかなりの部分帳消しにされたようです。予想外だったのはそれにも関わらず雇用の改善が続いたこと。それも二度目の消費税増税とコロナ禍で反転しそうですが…

安倍政権下での主な経済指標の動きについてはGYさんの note にまとまっています。

さて、冒頭で引用したエントリで「事情が許す限り参加したいと思っています」と言っていた官邸前デモですが、その後も何度か参加しました。リフレ派だからといって出入り禁止にはなりませんでした。

安倍総理が8%への消費税増税を表明した翌月の2013年11月6日のデモでは最後のコール「総理、わたしたちの声を聞いてください!」の音頭を取らせていただきリフレバージョンでお送りさせていただきました。「わたしたち」のところを「ポール・クルーグマン」「ジョセフ・スティグリッツ」「ケネス・ロゴフ」に入れ替えて消費税増税中止を訴えるものです。

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クルーグマンスティグリッツはリフレ派&ノーベル賞経済学者。ロゴフはむしろ緊縮派で前の二人とは対立する立場ですが「そのロゴフでさえ消費税増税には慎重」という意味で含めてみました。

もちろん安倍総理はこんな声には耳を貸さず予定通り2014年4月に消費税は増税されました。

消費税増税が経済に与えたダメージは政府や日銀の予想以上のもので2015年10月に予定されていた10%への再増税の是非が問われる事態となり、2014年11月18日、安倍首相は再増税を2017年4月に延期することを決断します。これに先立つ2014年11月6日、安倍首相はクルーグマン氏と会談しこれが増税延期の決定打となったとのこと。*1

当時僕は「一年遅いわボケ!」と思いつつも胸をなでおろしたものです。

増税延期の決断が可能となったのは野田政権下で消費税増税が決まった際に民主党(当時)リフレ派の抵抗でねじ込まれた「景気条項(附則第18条)」があったからです。景気の悪化を理由に増税を凍結・延期できるというもの。しかし、安倍総理は景気条項を消費税法改正案から削除してしまいました。

危機感を抱いた僕は2015年11月に与野党に「消費税減税」を求めるネット署名を始めました。

まあ実際にはこの署名を始めるに当たってはウヨ曲折があったのですが…

2016年3月2日の官邸前デモでは消費税減税プラカードを掲げたり上の署名のビラを配ったりしました。

https://rna.sakura.ne.jp/share/diary/IMG_3280.JPG

2016年3月12日には保守系の人が企画した #消費税減税 の「ツイッターデモ」(日時を決めて一斉にタグを付けて声をあげることでトレンド入りを目指すもの)に参加して署名の宣伝もしました。*2

2016年6月1日、安倍総理は消費税10%への再増税を2019年10月に再延期することを表明しました。よく決断したものだなとは思いましたが「増税延期」では不十分なのは明らかでした。

2016年6月12日には松尾匡さんのシノドス・セミナーに参加して署名のビラを配ったり… って、あれよかったのかな?松尾さんは「いい署名ですね」とおっしゃってくださいましたが…

署名はその後だらだらと続けてきたのですが2017年の衆院選前に締め切って自民党公明党希望の党立憲民主党の各党に提出(郵送)しました。

賛同者数は締め切り前に急増して1000人を越え、なんとか格好はつきました。どうも山本太郎氏のこのツイートの影響が大きかったようです。

民進党の分裂など土壇場になってゴタゴタがあって大変でしたし*3 あんなに賛同者数増えて欲しかったのにそれを印刷・送付するとなると結構お金がかかったりで、もう二度とやらねーとか言いながらやってましたが、まあ、いい経験をした、と思っています。

署名提出後は特に各党から音沙汰はなかったです。ちなみに提出前に提出方法の確認のため各党に電話したのですが、公明党は何度電話しても連絡がつかず、自民党は受付の人がいきなり「はぁ?それはうちに言ってくるようなことじゃないと思うんですけど?」などと塩対応、民進党は選挙前で忙しくて直接受け取れないが党本部の警備員に渡してくれれば必ず受け取る旨丁寧に対応していただきました(が、党分裂で結局持ち込みは叶わず)。

色々あって政治運動に関わるのはこれで最後にしようと思って、その後は特に何もしていません。このところ消費税減税の話題を聞かない日はないというぐらいの状況ですが、僕の署名運動が少しは影響… なんてことは全く無いというのは承知ですが、まあ、感慨深いものです。

アベノミクス」には期待はずれな面が大きかったものの不幸中の幸いというか当初最悪のシナリオとして想定していた「アベノミクス大成功からの憲法改正」という流れが回避できたのは正直ホッとしています。

「ヤツらに手柄を渡すな、左派は手柄を横取りしろ」というのは今でも有効だと思っています。左派の一部からはリフレ政策に親和的な「反緊縮」の声が高まりつつあるのですが、最大野党の立憲民主党が消極的なんですよねぇ… 消費税減税も受け入れられずに国民民主党との合流でモメましたし。

現実的には安倍総理の後継がどうなるのかがまずは問題なのですが…

安倍総理辞任のニュースを見て真っ先に思ったのは「俺、失業するんちゃうかな…」でした。

安倍政権の間ずっと体調を崩していて正直いつクビになってもおかしくない状況なのですが、おそらく今の雇用状況では同程度のスキルのあるエンジニアを雇おうとすると高くつくという理由でなんとかクビにならずに済んでいるのだと思っています。雇用が悪化すればクビにして替わりを雇うことも現実的になりますし、そもそも景気が悪化して仕事が減って替わりもいらないということになれば…

まあ安倍総理にもここから目が覚めるような積極財政を打ち出す力はないと思うので、コロナ危機の今の状況ではどのみちヤバいのですが、後継次第では一気にヤバいことになりかねません。

そんなわけで「思いは複雑」というわけです。

*1:参照: https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2014-11-21/NFDA2J6K50Y101

*2:企画した人は日の丸アイコンの人でしたが「消費税減税に右も左もないので」みたいなことを言って左派の参加も歓迎とのことでした。今見たらアカウント凍結されてるけど…

*3:分裂前に署名した人の意向を確認したり。実際片方には署名を送らないで欲しいとの要望もあったので立憲民主党希望の党にはそれぞれ違うバージョンの署名簿を印刷して送っています。