Google の「キャッシュ」:透過性は合法キャッシュの要件か?

高木氏はH12.5.16 東京地裁 平成10(ワ)17018 著作権 民事訴訟事件 判決や、2000年11月に公表された著作権審議会国際小委員会報告書を引用して、無形的な利用に相当するデータの蓄積は「複製」に該当しないことを示しています。そしてキャッシュが「複製」に該当しない条件について考察しています。

Web コンテンツのキャッシュについては現行法では「複製」に該当しそうですが、それは社会通念的におかしい、現行法の主旨を尊重した上で、一定の条件を満たしたキャッシュについては「複製」にあたらないという線引きができるのではないか、と高木氏は提案しています。ここではそのようなキャッシュを「合法キャッシュ」と呼ぶことにします。

高木氏の考える「合法キャッシュ」の要件は、

  • 蓄積されたデータの揮発性
  • オリジナルデータに対する透過性

です。透過性というのはオリジナルデータの変化(更新・削除)がすみやかにキャッシュに反映されるということです。つまり、キャッシュされたデータをオリジナルデータの所有者が制御可能であることを意味します。しかし、この透過性・制御可能性の要件はどこから導かれたのかよくわかりません。高木氏が引用した判決文や報告書には、透過性があれば「複製」ではない(無形的利用)と読める部分が見当たらないのですが。。。

高木氏がプライバシー保護の観点から制御可能性を求めているのは知っていますが、複製権の文脈でこれが出てくるのは唐突で理解に苦しみます。

「複製」は別にしても透過性のあるなしで著作権の観点から問題が生じたり生じなかったりというのもよくわかりません。ユーザ認証の例は透過性の話ではなくて(オリジナルデータの変化がなくても成り立つ)純粋にキャッシュ上でアクセス制御がされないから問題という話でしょう。透過性があると(プライバシーではなく)著作権的に何が良いのかわかりませんでした。