いわゆる児童ポルノ禁止法(児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律)における児童ポルノの定義は第二条三項に書かれています:
3 この法律において「児童ポルノ」とは、写真、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体その他の物であって、次の各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいう。
一 児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態
二 他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
三 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
一号が一番深刻で三号がボーダーラインになります。三号に当たるものを「三号ポルノ」といいますが、範囲が微妙なのでしばしば議論になります。ネットに流れた山笠画像は三号ポルノに該当するのでしょうか?
「衣服の全部又は一部を着けない」というのは、全裸又は半裸等社会通念上公衆の面前で人が着用しているべき衣服を着けていない状態を指します。
山笠画像では「ふんどし(締め込み)」が「社会通念上公衆の面前で人が着用しているべき衣服」に該当するのかどうかが問題です。日常生活においては該当しないと思われる一方、祭りの場では該当するようにも思われ、微妙なところです。
それが着用される場においては「社会通念上公衆の面前で人が着用しているべき衣服」だとしても、画像が閲覧される場は日常生活の場であるというのも問題になるかもしれません。あれを「お祭りの写真」と思って見ればふんどしは普通の衣服に見えるかもしれないし、文脈抜きで「少女の写真」として見ればふんどしはありえない衣服に見えるかもしれません*1。
「性欲を興奮させ又は刺激する」というのは、だれの性欲を興奮させ刺激するということであるのかが問題になりますが、これは「一般通常人」が対象になります。一般通常人が興奮しない(と裁判所が判断する)なら三号ポルノではありません。例えば「(幼女が)おふろのコマーシャルなどで、下着姿でパンツ一枚になってというような」姿態は「通常、一般人は性欲を興奮させ、刺激するというところまで至らない」と思われるので三号ポルノにならないだろうと考えられています(第145回国会 法務委員会 第11号)。
逆に三号ポルノにあたる例として「全裸または半裸の児童に扇情的なポーズをとらせた姿態の描写」が挙げられています(参議院会議録情報 第145回国会 法務委員会 第8号)。これは性器などの描写がなくても、ぼかしをかけてあっても、です。*2
さて、山笠画像は「一般人」の性欲を興奮させ刺激するものでしょうか? 例えば宮沢りえが1990年のカレンダーで「ふんどしルック」を披露して一般に話題になった時のことを考えると、ふんどしは風変わりながらセクシーな衣装として一般に認知されているようです。でもそれはポルノとして扱われなかったじゃないか、という反論もあるかもしれませんが、「児童ポルノ」は一般のポルノとは基準が違います。刺激の程度が過度でなくても(「いたずらに性欲を興奮または刺激せしめ」なくても)アウトになり得ます。
と、いうことで結論の出ないままこの項続く。この方面に詳しい奥村弁護士(id:okumuraosaka)の見解を知りたいところです。。。
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*1:僕が始めて山笠画像を見た時は「ありえない!」という感想を持ち、他の画像を見るまでコラージュだと思っていました。
*2:ポーズが通常ならOKかというとそうでもなく、水泳の授業風景を赤外線で透視したものが三号ポルノと判断された例もあります。参照:[id:okumuraosaka:20040426#p3]