考えがまとまっていないが、とりあえず増田さんの記述に勝手にお返事。
今後、単純所持も禁止となると、後世に日本の性風俗史(少なくともその一部)を復元する際、もう史料は関係者の記憶くらいしかないんだなあ。いくらオーラル・ヒストリーが注目され始めているとはいえ、何か残念な気がする。
児童ポルノ法以前の日本(注意:じゃっかん性的な描写あり) (はてな匿名ダイアリー)
これ重要。せめて国会図書館くらいは特別扱いする必要があるのではないか。単純所持禁止というのは完全実行されれば歴史からある文化の存在を抹消するのと同じわけでほとんど焚書みたいな話になってしまう。このあたり先行している諸外国ではどう議論されたのだろう*1。
しかし、児童ポルノの存在そのものが児童虐待であるという理屈には反対できない(二次元作品はまた別の話だが)。
児童ポルノ法以前の日本(注意:じゃっかん性的な描写あり) (はてな匿名ダイアリー)
反対しづらいということならともかく、理屈そのものが反論不可能というわけではないと思う。児童ポルノ禁止法でポルノとされているもののうち、性犯罪(児童買春含む)の記録に相当するものは別として、三号児童ポルノのうち、いわゆる「児童エロチカ」に相当するような作品については基本的にモデルが作品の制作と発表に同意しているのであって、本人の自己決定能力が限定的なので同意は無効ということはあっても、時間が経って大人になったモデルが改めて同意すれば人権問題にはならないはずだ。同意確認をどうやってやるのかというテクニカルな問題はあるにせよ。
内容は(購入していないのでパッケージから想像するに)、日本人や東南アジアの少女が裸で戯れるイメージビデオのような比較的ソフトなものから、ローティーンのSMもの、裏ビデオにモザイクを施して合法(?)ビデオにしたものまで色々あった。(中略)
児ポ法以前とはいえ、撮影者は児童福祉法違反には問われなかったんだろうか。
児童ポルノ法以前の日本(注意:じゃっかん性的な描写あり) (はてな匿名ダイアリー)
当時は児童福祉法に国外犯処罰規定がなかったのだと思う。平成16年の改正で国外犯処罰規定が新設されている。*2
そういうエロ本はいかにもエロスな感じの色っぽいお姉さんが表紙になったエロ本とは違って、制服姿の少女が表紙だったりして、一見爽やかな印象を与えるものだった。そうした雑誌はいくつかあって、それらにはAV女優やプロのモデルのヌードはもちろんあったが、何よりも読者からの写真投稿コーナーが名物になっていた。雑誌名をいくつかあげれば「投稿写真」、「熱烈投稿」、「スーパー写真塾」、「アクションプレス」などなど。
児童ポルノ法以前の日本 2 (はてな匿名ダイアリー)
一方、女子高生中心の投稿系雑誌は「爽やかなお色気」のイメージがあったためか、トラバしてくれた人も指摘するようにコンビニの成人雑誌コーナーにも置かれていた。「日本ではコンビニで堂々と児童ポルノを販売している」なんて欧米に批判されることもあるが、このような事実をかんがみれば、その批判も故なきものではないと思う。
児童ポルノ法以前の日本 3 (はてな匿名ダイアリー)
表紙が爽やかというかアイドル雑誌風というのはある。爽やかじゃなくてもコンビニには置ける(今でも)のでそういう問題でもないだろうとも思うが。表紙はともかく内容を「爽やかなお色気」と言うのは微妙。読者投稿の中にはハメ撮りなんかもあったし、「アクションプレス」のグラビアにはハードな内容のものが結構あった。
しかし、90年代後半にはブルセラが社会問題となり糾弾されショップが撤退しはじめた。さらに援助交際が問題視され、各都道府県で青少年育成条例が厳格化されるようになってきた。国会でも児童ポルノ問題が語られ始めるようになる。
児童ポルノ法以前の日本 3 (はてな匿名ダイアリー)
児童買春・児童ポルノ問題は元々はブルセラ・援助交際問題とは別の話で、主に日本人による東南アジアでの児童買春・児童ポルノ制作などが問題になっていたはずだ。法案作成段階で後からブルセラ・援助交際問題への対応が割り込んできたと聞いている。
かといって、ガチのロリコン向けコンテンツを手に入れるハードルはそれなりに高かったわけで、児ポ法以前はロリコンにとって天国だった、とか、日本では児童ポルノが野放しだった、とか言われると、時代の生き証人、語り部としては「それはちょっと違うんじゃね?」と言いたくなる気持ちはある。もっとも、自分がモデルと同世代だったことでそれらを「ガチのロリコン向け」と思わなかったということもあるかもしれない。
児童ポルノ法以前の日本 3 (はてな匿名ダイアリー)
ここで言う「ガチのロリコン」というのはローティーン以下の児童とセックスしたがる、という意味だろうか? *3 そういう意味で「野放し」ではなかったというのはそうだと思う。
大部分は児童ポルノ禁止法で言う三号児童ポルノ(衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの)であって、一号(児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態)や二号(他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの)ではなかった。
もっともハイティーンのモデルを使ったブルセラ系の雑誌・ビデオ等では一号・二号が商業的に制作され、表で*4普通に流通していたのも事実だ。しかし、むしろ規制によって歯止めが効かない(流通や世間の良識の制約を受けない)裏市場の需要が膨らみ過ぎて問題が拡大しているようにも思える。
逆に三号については規制によって業者が着エロ方面に鞍替えすることで、かえって芸能界志望の子が巻き込まれやすくなってしまっている。ヌードじゃないし子供番組の制作経由で勧誘されたりするとついつい出演に応じてしまうようだ。業者のスカウトがダンスイベントなんかに混じっていてファンのオタが戦々恐々とする事態も発生している。親や事務所も同じ出版社が出している写真集くらいチェックすればいいのにとは思うが、チェックしてもロリコン視点のエロのツボはわかりにくいのだろうか。
単純所持規制について書くつもりが随分脱線してしまった。しかし、単純所持について書くのは難しい。声高に反対を主張して悪目立ちすれば改正後に「あいつ怪しい」なんてチクられて家宅捜索なんてこともありえなくはない。90年代まで合法だっただけに押入の中からバックアップメディアの中まで叩いてもホコリが出ないようにするのは簡単なことではないのだ。